忠君愛国(ちゅうくんあいこく)
→ 君に忠義を尽くし、国を愛すこと。
忠君愛国とは、君主に忠誠を尽くし、祖国を愛する心を指す言葉だ。
この概念は、古来より多くの国で重んじられてきた。
中国では、儒教の教えに基づき、君主への忠義と親への孝行が徳目とされた。
日本においても、武士道の精神性として根付き、主君への献身と国家への奉仕が求められた。
明治維新では、尊王攘夷の思想のもと、忠君愛国が国家の近代化を推し進める原動力となった。
日露戦争や第二次世界大戦でも、「お国のために」という言葉が兵士たちを突き動かした。
戦後は、平和憲法の理念に基づき、愛国心のあり方が問い直された。
しかし現代では、ナショナリズムの過熱が戦争を招くことへの反省から、忠君愛国はやや否定的に捉えられがちだ。
グローバル化が進む中、1つの国への絶対的な忠誠より、世界平和への貢献が求められている。
ただし、自国の文化や伝統を大切にする心は、他国への理解にもつながる。
世界には200近い国があり、それぞれに固有の価値観がある。
民族、言語、宗教、習慣など、多様性に富んだ地球社会を形作っている。
その多様な在り方を知ることは、新しい時代の忠君愛国の在り方を考えるヒントになるだろう。
自国の良さを認識すると同時に、他国の良さにも目を向ける。そんな開かれた愛国心が、これからは必要なのかもしれない。
国連加盟国の数と内訳
2022年現在、国連に加盟している国と地域は193ある。
内訳は、主権国家が192、オブザーバー資格を持つバチカン市国が1だ。
国連加盟国の約4割が人口1,000万人未満の小国だ。
アジア地域が最多の48ヶ国、続いてアフリカが54ヶ国、ヨーロッパが44ヶ国、中南米が33ヶ国、北米が2ヶ国、オセアニアが12ヶ国となっている。
国家としての要件には諸説あるが、「一定の領土、永続的な住民、主権国家から独立した政府、他国と関係を持つ能力」の4点が国際法上の基準とされる。
ただし、これらの要件をすべて満たしていても、国連総会での投票により加盟が認められない場合がある。
逆に、要件を満たしていなくても、政治的な理由で加盟が認められることもある。
パレスチナは、イスラエルとの対立から国家承認をめぐる争いが続いている。
2012年に国連総会で「オブザーバー国家」の地位を得たが、常任理事国のアメリカが拒否権を行使し、正式加盟は実現していない。
国際社会における「国家」の定義は、法律的な側面だけでなく、政治的・歴史的な背景も色濃く反映されているのだ。
国連非加盟国も20以上ある。
台湾は、中国との関係から国連加盟を果たせずにいる。
北キプロスは、トルコ系住民が一方的に独立を宣言した地域だが、トルコ以外の国には承認されていない。
ソマリランドは、ソマリアからの事実上の独立を主張するが、国際的な承認は得られていない。
その他、プエルトリコ、西サハラ、コソボ、アブハジア、南オセチア、沿ドニエストルなども、独立をめぐる係争地となっている。
一方、イギリス領ジブラルタル、フランス領ニューカレドニア、アメリカ領グアムなどは、宗主国からの独立を望まない非自治地域だ。
住民投票で自治権の拡大を選択したり、現状維持を支持したりと、独立をめぐる意識はさまざまだ。
国連非加盟国の中には、独立を求める地域と、そうでない地域が混在しているのが実情だ。
知られざる国々の特徴
国連加盟国の中でも、日本人にはなじみの薄い国は少なくない。
太平洋の島嶼国、アフリカの内陸国、中央アジアの山岳国など、地理的に遠く、情報も入りにくい。
そんな知られざる国々の素顔に迫ってみよう。
例えばキリバスは、赤道直下の太平洋に点在する島嶼国だ。
3つの島群からなり、面積は811平方キロメートル。
日本の67分の1の面積に、茨城県の23分の1の人口が暮らしている。
国土のほとんどが標高5メートル以下の低地で、海抜1メートル未満の土地も全体の12.5%を占める。
気候変動による海面上昇が脅威で、21世紀中には国土の大部分が水没すると予測されている。
主な産業は漁業とコプラ生産で、観光業にも力を入れ始めた。主食はココヤシ、タロイモ、パンノキだ。
ツバルも太平洋の島国で、9つの環礁からなる。
面積は26平方キロメートルで、新宿区とほぼ同じ。
人口は1万1,900人で、鳥取県の智頭町より少ない。
サンゴ礁が隆起してできた地形で、標高2メートル程度の低地が主だ。
キリバス同様、海面上昇による水没の危機が叫ばれる。
主な産業は漁業とコプラ生産だが、国民の多くが海外に出稼ぎに出ている。
主食はタロイモ、キャッサバ、ヤシだ。
アフリカの内陸国、ブルキナファソは、かつて仏領上ボルタと呼ばれた。
面積は274,000平方キロメートルで、日本の7割強。
人口は2,137万人(2021年)。
国土の大半がサバンナ気候で、乾季は11月から5月、雨季は6月から10月と、はっきりと分かれる。最高気温は40度を超えることもあるが、雨季の平均気温は30度前後と過ごしやすい。
主な産業は農業で、綿花、ゴマ、落花生などを生産する。
鉱業ではマンガン、亜鉛、金の採掘が盛ん。
主食はソルガム、トウモロコシ、キャッサバだ。
同じくアフリカのジブチは、エチオピアとソマリアに挟まれた小国だ。
面積は23,200平方キロメートルで、四国4県とほぼ同じ。
人口は100万人(2022年)。
国土の大半が乾燥した火山性の土地で、標高1,000メートル前後の高原が広がる。
年間降水量は130ミリと少なく、わずかなオアシスが人々の生活を支える。
主な産業は貿易で、首都ジブチの港は東アフリカ有数の貿易拠点だ。
石油備蓄基地も整備され、エネルギー輸送のハブとなっている。主食はソルガム、トウモロコシ、小麦だ。
中央アジアのキルギスは、天山山脈に囲まれた内陸国だ。面積は199,900平方キロメートルで、日本の半分強。人口は658万人(2022年)。
国土の大部分が標高1,500メートル以上の山岳地帯で、最高峰のヴィクトル・ピークは7,439メートルに達する。夏は気温30度前後の暑さだが、冬は氷点下20度まで下がることもある。
主な産業は農業と牧畜で、羊や馬を放牧する遊牧が営まれてきた。
鉱業では金や石炭の採掘が盛んだ。主食はパン、米、ジャガイモだ。
日本人渡航先の傾向
日本人の海外渡航先は、近隣のアジア諸国に集中している。
2019年の統計で、1位が中国の737万人、2位が韓国の558万人、3位が台湾の489万人、4位がタイの155万人、5位がアメリカの151万人だった。
上位5ヶ国で全体の7割以上を占める。
一方、太平洋の島嶼国への渡航者数は非常に少ない。
ツバルへの渡航者数は年間10人程度、キリバスは200人弱だ。
アフリカ諸国も軒並み1,000人に満たない。
ブルキナファソが年間200人程度、ジブチは50人以下だ。
中央アジアのキルギスも、1,000人に届かない。
日本から遠く、情報も少ない国々は、観光地としての認知度が低い。
ビジネス渡航の需要も乏しく、現地との人的交流が進みにくい。
ただし、国際協力の分野では、JICAを中心に、途上国支援のプロジェクトが展開されている。
キリバスでの防災対策、ブルキナファソでの教育支援、ジブチでの港湾整備など、日本の技術力を生かした取り組みが行われている。
新型コロナウイルスの影響で、2020年以降は海外渡航者数が激減した。
2020年の渡航者数は、前年比84%減の316万人まで落ち込んだ。
渡航先の内訳も変化し、アメリカ、中国、オーストラリア、シンガポール、タイの順になった。
ワクチン接種の普及により、徐々に渡航者数は回復してきているものの、コロナ前の水準には程遠い。
ポストコロナ時代の渡航先としては、自然や野生動物との触れ合いを求める傾向が強まるとみられる。
密の回避できる小国や、エコツーリズムに適した地域に注目が集まるかもしれない。
キリバスのサンゴ礁、ツバルのビーチ、ブルキナファソのサバンナ、キルギスの山岳など、手つかずの自然が残る国々の魅力が、再評価される可能性がある。
知られざる国の相関図
ここで紹介した10ヶ国を、日本からの距離、人口、面積、主食で分類してみよう。
まず日本からの距離では、8,000キロメートル以上離れた国が半数を占めた。
キリバス、ツバル、ブルキナファソ、ジブチ、キルギスの5ヶ国だ。
東京—ロンドン間の約1.5倍の距離がある。
一方、8,000キロメートル未満の国は、太平洋のパラオ、ナウル、オセアニアのトンガ、サモア、バヌアツの5ヶ国だった。
人口規模では、100万人未満の国が3ヶ国あった。
太平洋のツバル(1万1,900人)、パラオ(1万8,000人)、ナウル(1万2,600人)だ。
日本の市町村レベルの人口規模だ。
一方、100万人以上の国は7ヶ国で、ブルキナファソが最多の2,100万人だった。
次いでキルギスの658万人、ジブチの100万人と続く。
国土面積では、1,000平方キロメートル未満の国が2ヶ国あった。
ツバル(26平方キロメートル)とナウル(21平方キロメートル)だ。
屋久島とほぼ同じ大きさだ。
一方、1,000平方キロメートル以上の国は8ヶ国で、ブルキナファソが最大の27万4,000平方キロメートルだった。
日本の4分の3弱の広さがある。キリバス(811平方キロメートル)、パラオ(459平方キロメートル)は1000平方キロメートル前後の小国だ。
主食では、イモ類が主体の国が6ヶ国と最多だった。
キリバス、ツバル、パラオ、トンガ、サモア、バヌアツだ。
熱帯の島嶼部では、タロイモやヤムイモが主食として親しまれている。
一方、穀物を主食とする国が3ヶ国あった。
ブルキナファソ、ジブチ、キルギスだ。乾燥地域では、雨水を利用したソルガムや小麦の栽培が中心だ。
以上の分類を踏まえると、日本から遠い内陸国で、人口が多く、面積が広く、主食が穀物である国の代表が、ブルキナファソといえる。
逆に、日本から比較的近い島嶼国で、人口が少なく、面積が狭く、主食がイモ類である国の代表は、ツバルやパラオといえる。
まとめ
忠君愛国は、自国の価値を大切にする心であると同時に、他国の価値を認め合う姿勢でもある。
近年は、ナショナリズムの行き過ぎが懸念される一方、グローバル化の中で多様性の尊重が叫ばれる。
自国の文化に誇りを持ちつつ、他国の文化にも敬意を払う。そんなバランス感覚が求められている。
世界には、日本であまり知られていない国が数多くある。
太平洋のキリバスやツバル、アフリカのブルキナファソやジブチ、中央アジアのキルギスなど、地理的に遠く、情報も乏しい。
しかしそこには、独自の歴史と文化が息づいている。
キリバスの白砂のビーチ、ツバルのサンゴ礁、ブルキナファソの草原、ジブチの砂漠、キルギスの山岳。雄大な自然が広がり、人々は昔ながらの暮らしを営んでいる。
タロイモを植え、ヤシの実を収穫し、家畜を追う。都会の喧騒から離れた、のどかな時間が流れている。
彼らの暮らしぶりを知ることは、視野を広げ、世界を多角的に見る目を養う。日本人の多くは、欧米や近隣のアジア諸国を旅先に選ぶ。
ハワイのリゾート、ヨーロッパの歴史的建造物、アジアのグルメ。あらかじめイメージがあって、期待通りの体験ができる。
けれども、時には、未知の地に足を踏み入れてみるのも面白い。
現地の人々と触れ合い、生活習慣の違いを実感する。
想定外の発見や、戸惑いもあるかもしれない。
でもそれもまた、かけがえのない異文化体験だ。先入観を捨て、謙虚に学ぶ姿勢が大切だ。
忠君愛国の先にあるのは、多様な価値観の理解と尊重だ。
自文化の良さを再認識すると同時に、異文化への関心を深める。
旅を通じて、グローバルとローカルの融合を体感する。
国境を越えた相互理解が、平和で豊かな世界を作る土台になる。
遠い国の小さな営みにも思いを馳せる。
島人の優しさ、遊牧民の逞しさ、砂漠の民の知恵。
人類の英知は、地球上の至る所に宿っている。
そこから学ぶことは実に多い。未知なる世界への飛翔が、人生を豊かにしてくれるはずだ。
私たちに求められているのは、愛国心を狭く捉えることではない。
自国を愛すると同時に、他国をも愛する広い心だ。
国籍も、民族も、宗教も超えて、人間同士の絆を大切にする。
一人一人が、世界市民としての自覚を持つ。
そんな地球規模の連帯意識こそが、希望の未来を拓くのだと信じたい。
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