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2023年6月16日 投稿:swing16o

心配や不安になるという感情とメカニズム

小心翼翼(しょうしんよくよく)
→ 慎み深く細事にまで気配りするから転じて、気が小さくビクビクしているさま。

気が大きいとか小さいというのは、人それぞれ明確に違いが出るかもしれないが、心配や不安というものは少なからず誰にも共通するものだろう。

人間特有の感情の1つだろうが、そもそもなぜ心配や不安になるのだろうか。

そのメカニズムについて書いていこう。

心配と不安の違い

その前に、大した問題ではないかもしれないが、心配と不安という感情は似ているように思うかもしれないが、実際にはそれぞれ異なる心理的な状態を指している。

心配

心配は特定の問題や状況に対する思考の過程をいう。

これは主に未来の出来事や可能性についてのネガティブな思考や予想に関連しているといっていい。

つまり、心配はしばしば「なにが起こるか?」という問いと関連し、「もし…ならどうしよう?」というような仮定的な状況を考えることを含む傾向にある。

不安

一方で、不安は感情的な反応または状態で、不安定さ、予測不能さ、または危険を感じることによって引き起こされる。

また、不安は身体的な症状を伴うことがよくあり、これには心拍数の増加、発汗、震えなどがある。

つまり、不安はしばしば強い感情的反応を伴い、「どうなるかわからない」とか「危険だ」というような不確実性や脅威に対する感覚に関連しているといえる。

なぜ、冒頭に心配と不安の違いを説明したのか。

それは、心配と不安の違いを理解することは、心配や不安が過度になったときにどのように対処するかを決定するのに役立つからである。

例えば、心配は認知的なアプローチ、例えば認知行動療法(CBT)を用いて対処することができる。

これは、ネガティブな思考パターンを特定し、それをより現実的で健康的なものに置き換えることを目指す手法だ。

反面、不安はリラクゼーション技法、呼吸エクササイズ、または薬物療法などのより物理的なアプローチを用いて対処することができるというわけだ。

心配や不安になるメカニズム

それでは、具体的に心配や不安になるメカニズムを概説していこう。

くり返しになるが、心配するという感情は、人間の脳が未来の潜在的な問題に対処しようとするときに生じるもので、とくにストレスや不安と密接に関連している。

その大前提を念頭に置きながら概説すると、心配になるメカニズムは、人間の脳が情報を処理し、予測し、リスクを評価する複雑なプロセスを含んでいるといえる。

また、不安は感情的な反応または状態で、不安定さ、予測不能さ、または危険を感じることによって引き起こされることも頭の片隅に置いておきたい。

その上で、心配や不安になるメカニズムをわかりやすく説明すると下記のとおりだ。

1)情報の収集と解釈

まず、私たちの感覚器官(視覚、聴覚、触覚など)からの入力が、脳の「感覚野」に送られ、そこで情報が処理される。

この段階では、情報はただ単に「データ」として扱われる。

2)意味づけ

情報は次に「連合野」に送られ、そこで私たちの既存の知識や経験と結びつけられ、意味が与えられる。

例えば、「火災報知器の音」は「危険」を意味すると解釈されるといった具合いだ。

3)感情の発生

そして、情報が意味づけられると、それは「辺縁系」に送られ、特に「扁桃体」で感情が生成される。

扁桃体は特に危険や脅威に対する反応を制御しており、「火災報知器の音」はここで「恐怖」や「不安」の感情を引き起こすのである。

4)反応の準備

恐怖や不安の感情は、脳の「前頭前皮質」に送られ、ここで適切な反応が計画される。

例えば、「火災報知器の音」に対する反応として、「逃げる」、「消火器を探す」、「110番に電話する」などの行動が計画されることになる。

5)心配と不安

とはいえ、なにが起こるか確信が持てない場合や予測が難しい場合、または制御不能な状況の場合、人間は自然と心配や不安を感じるようになる。

そして、心配や不安になるという感情は、私たちが問題に対処し、リスクを最小限に抑えるための策略を立てるための「モチベーター」や「警告信号」の役割を果たしている。

心配や不安になるプロセス

上述した心配や不安になるメカニズムのプロセスは、すべて数秒以内に行われる。

また、何度もくり返しになるが、未知の事象や制御不能な状況が存在するとき、このプロセスは循環することがある。

その循環は「思考のループ」や「ネガティブなループ」として知られている。

それから、これらのループが持続すると、一般的に「過剰な心配」や「不安障害」と呼ばれる状況に繋がるのである。

心配や不安が適切なレベルであれば、上述したところのモチベーターや警告信号として、それは生存や成功に不可欠なツールとなる。

ところが、それが制御できないほどになると、人々の日常生活や健康に悪影響を及ぼす可能性がある。

そうなった場合の治療としては、認知行動療法(CBT)や薬物療法(抗不安薬や抗うつ薬)などがあるのは周知の事実だろう。

脳のこのループを断ち切り、より健全で健康的な思考パターンを再構築するのに一役買っているというわけだ。

いずれにせよ、心配するという事象は、予想外の状況に対処し、可能な問題を解決し、自己保存のための行動をとることを促すため、非常に重要な生物学的メカニズムであることに変わりはない。

つまり、心配や不安は、私たちの脳が未来を予測し、問題を予防するための戦略を立てる能力の一部であり、それが適切な範囲内であれば、生存と成功にとって重要な役割を果たしているわけだ。

心配や不安のメカニズムに関する論文

この心配や不安のメカニズムに関する論文は非常に多く出ている。

というのも、人の感情に関わる部分なので、より複雑になっているということは想像に難くないだろう。

その中でも、最も有名な論文の1つにアメリカの心理学者、アルバート・エリスによる「Rational Emotive Behavior Therapy」がある。

  • Ellis, A. (1962). Reason and emotion in psychotherapy. New York: Lyle Stuart.

この論文では、エリスは、心配は、ネガティブな思考パターンによって引き起こされることを明らかにしている。

そして、この研究は、心配の克服に役立つ認知行動療法の開発に繋がっている。

それから、心配のメカニズムに関するもう1つの重要な論文は、アメリカの心理学者、マーティン・セリグマンによる「Learned Helplessness」だろう。

  • Seligman, M. E. P. (1975). Learned helplessness. New York: W. H. Freeman.

この論文では、セリグマンは、ネガティブな出来事が起こっても、それをコントロールできないと学習した動物は、心配や不安などの症状を呈することを明らかにしている。

また、この研究は、心配のメカニズムに関する理解に大きな貢献をしている。

他にも、1996年に心配のメカニズムに関する論文がアメリカの心理学者であるマーサ・ミラーによって発表されている。

  • Miller, M. (1996). The worry process: A cognitive-behavioral analysis. Behaviour Research and Therapy, 34(7), 791-804.

この論文では、心配はストレスや不安などのネガティブな感情に対処するために私たちが行う認知的なプロセスであると説明されている。

心配することで、私たちはネガティブな出来事が起こる可能性を低下させ、起こったとしてもその影響を軽減しようとする。

ところが、心配が過度になると、逆にストレスや不安を増大させ、問題解決能力を低下させてしまうこともある。

この論文では、心配のメカニズムには、次の3つのステップがあることが書かれている。

  1. ネガティブな出来事に対する予測
  2. ネガティブな出来事が起こった場合の影響の想像
  3. ネガティブな出来事を防ぐための対策の検討

まとめ

ここまで読んでもらえたら、心配や不安を抱くという感情はある意味で自然発生するものだと割り切ればいいということがわかるだろう。

心配や不安を抱くことを恐れる必要はなく、それは私たちの脳が未来を予測し、問題を予防するための戦略を立てる能力の一部だということだ。

それが適切な範囲内であれば、生存と成功にとって重要な役割を果たしているという認識を持つことで、心配や不安を抱くことを遠ざけるのではなく受け入れることができる。

なによりも、常日頃忙しくすることで、心配や不安からの解放は簡単に行えたりするものだ。

 

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植田 振一郎 Twitter

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