順序不同(じゅんじょふどう)
→ 順序が一定の基準になっていないこと。
順序が一定の基準になっていないことというか、思っていたとおりにならないことは世の常だ。
少々、順番が基準から逸れたところで、ジタバタしてはいけない。
最期の最期までしつこく諦めずに一点突破することで、状況を打破することができる。
少なくとも私はそう考えているし、そう行動してきた結果が今の自分を形成していると思っているし、変わることはないだろう。
課題は常に生まれる。
そんなときにどう対応していくのか、アドリブ力がますます求められる時代に突入している。
リスキリングという概念
失われた20年とか30年と言われている日本には下記のような課題が挙げられる。
- 人口減少や高齢化に伴う労働人口の減少
- 地方と都市部あるいは大企業と中小企業との間のデジタル格差
- デジタル人材不足
こういった背景において、リスキリングという言葉が注目されている。
ということで、特に人材確保、育成が重要課題となっている中小企業において、リスキリングの進め方およびそのポイントについて解説していく。
そもそも、リスキリングという言葉は、職業能力の再開発、再教育という意味合いで使われてきた言葉だ。
そしてリスキリングという言葉は、岸田首相が2022年10月の所信表明演説の場で、個人のリスキリングの支援に5年で1兆円を投じると表明したことがきっかけで注目を集めたといわれている。
岸田首相は、日本の持続的な成長のため科学技術のイノベーション、スタートアップ、脱炭素、デジタル化に重点を置くと提示した。
その上で、構造的な賃上げの実現に向け、賃上げと労働移動の円滑化、人への投資という3つの課題の一体的改革を進めると強調している。
年功序列的な職能給からジョブ型の職務給への移行、リスキリングへの支援を打ち出し、企業間、産業間での労働移動の円滑化に向けた指針を本年6月までに取りまとめると表明した。
新しい資本主義実現会議によって労働市場改革の指針取りまとめ作業が進められているのが実態というわけだ。
リスキリングの実態と重要視される理由
パーソル総合研究所によるリスキリングの実態調査結果によると下記の報告があがっている。
正規雇用者全体で、一般的なリスキリング経験と常に新しい専門性やツールなどを学び続けているという、リスキリング習慣がある人は3割前後だった。
それに対して、昨今重視されているデジタル領域のリスキリング経験者は、2割程度に留まっている。
定量調査によると、リスキリングに対する実態はかなり低いと言わざるを得ないだろう。
それにも関わらず、中小企業においてもリスキリングが重要視されているのはなぜか、その理由を書いていこう。
1)DX(デジタルトランスフォーメーション)への加速対応
自社に新たな価値を生み出し競争力強化を図るために、DXが各企業で加速している。
DXが浸透すると、仕事の流れが大きく変わり、スタッフに求められるスキルも変化することになる。
特に、高度なITスキルを持った技術者など、高い専門性を有している人材確保、育成が急務となっている。
例えば、AIとの共存の仕組みを設計するなど、人間にしか行えないITスキルを持つ人材を育てたり、外部からの人材確保が急務となっている。
2)ビジネススタイルの変化への対応
営業スタイルは、これまでの対面営業活動からWebを活用した営業活動に比重が高まっている。
というよりも、インターネットビジネスやECサイトが普及するなど、Webスキルを身に付けなければ商売にも支障をきたすのが当たり前になっている。
このような社会背景から、Webを駆使した営業手法に変革させるためには、Webスキルの向上が欠かせなくなっているというわけだ。
リスキリング浸透によるメリット
それでは、リスキリングが浸透することで、どんなメリットがあるのか、具体的に紹介していこう。
業務の効率化を図ることができる
スタッフのスキルを再開発し、業務プロセスそのものを変革することで業務効率化を図ることができる。
例えば、データ活用のスキルが身に付けば、これまでの調査にかかっていた時間が大幅に短縮され、他の業務に使える時間が生み出される。
また、スキル向上によって人材の再配置が可能になり、適材適所で成果を発揮することができるので、その結果、生産性の向上も期待できる。
柔軟な対応力が身につく
スタッフのスキルを再開発すれば、既存の人材で社内のあらゆる課題の解決が可能になる。
市場の変化や仕組みが転換される度に、新しいスキルを持つ人材を確保する必要がなくなるため、手間と費用の節約にも繋がる。
新しいアイデアの創出ができる
スタッフが新しいスキルを習得すると、これまでの慣習に囚われることなく、新しい考え方によって斬新なアイデアが生まれやすくなる。
商品やサービスを開発するときに独創的な発想を取り入れたり、業務の進め方を新たな形にしたりするなど、社内に良い変化をもたらすというわけだ。
スタッフの成長意欲を向上させる
会社に勤めながら自身のスキルを高めたいと考えているスタッフは少なからず存在するものだ。
会社側がスタッフの成長意欲に応えられるような研修プログラムを構築することで、スタッフが新たな能力を習得し成果を出すことに繋がりやすい。
つまり、モチベーション向上につながるとともに会社の業績にも貢献できるようになるというわけだ。
企業が取り組むべきDX
リスキリングを浸透させるためには、あらゆるところで聞くようになったDXを進めるべきだという結論に行き着く。
改めて説明すると、DXとはデジタル・トランスフォーメーションを略した言葉だ。
トランスフォーメーションという言葉には、単なる改良や改善を超えて根本から作り替えることという意味合いが含まれている。
一般的には企業がAI、IoT、クラウド等のデジタル技術を活用して事業課題を解決したり、新たな顧客価値を生み出したり、最終的にビジネスモデルの転換を実現することを意味することが多い。
また、中小企業の課題として、人材不足や業務効率化の遅れなどが挙げられており、DXに取り組む中小企業は少しずつ増えている。
その背景にはデジタル技術の発展により、比較的高度な技術を安く使えるようになっていることや、デジタルでできることが急速に増えていることがある。
これは同時に、デジタル技術を活用して新しいサービスの提供や新たなビジネスモデルを構築しようとする競合他社もいると考えられ、先んじて取り組むべきテーマであるともいえるわけだ。
つまり、DXの目的をまとめると下記のとおりとなる。
- 業務効率化による生産性の向上
- 既存製品やサービスの高付加価値化
- 新製品やサービスの創出
- 現在のビジネスモデルの変革
- 企業文化や組織マインドの根本的な変革
DXに向けて避けて通れないリスキリング
なぜ、DXを進めるに当たってリスキリングが重要なのかについて書いていく。
中小企業がDXを実現するためには、まずはスタッフへの丁寧な説明が必要になる。
自社の変革は、大企業以上にスタッフの不安や抵抗が大きくなる傾向がある。
なぜ自社にDXが必要となっているのか、その背景や自社およびスタッフへのメリットを丁寧に説明した上で、スタッフにリスキリングが重要であることを理解してもらう必要があるというわけだ。
また、中小企業がDX化への取り組みにあたっては、中小企業向けパッケージシステムが普及しており、自社にあったものを選択すれば、大きな開発コストをかける必要性は少ないと考えられる。
ただし、人材に関しては、大企業のように高い人件費をかけてデジタル人材を確保することが難しいため、社内でデジタル人材を育成することが必要だ。
デジタル技術を用いて新しい事業領域を開拓する際に、中小企業は大企業以上に迅速に、スタッフの新たなスキル習得を実現する必要がある。
ここに手間取れば、ビジネスモデルの転換が遅れるばかりか、人手や資金面の余力が小さい中小企業の経営が圧迫されかねない。
このような理由から、中小企業におけるリスキリングの重要性が高いといえるわけだ。
一般的には、社内のDXに向けて、高度なデジタル技術を駆使できるシステムエンジニアなどのIT人材の確保が必要になると言われている。
ところが、このような専門人材を確保するだけではDXは困難だという事実に気がついた方がいい。
DXによって、すぐに仕事内容が変わらない人もいるかもしれないが、将来的に多くのスタッフがデジタル技術を使いこなせるようになれば、企業としても一層の生産性向上に繋がる。
つまり、DXを進めていくためには、システム構築ができるIT人材の確保だけで良いということはなく、スタッフ全員がデジタル技術を駆使できるようになるためのリスキリングが必要だというわけだ。
中小企業におけるリスキリングの3つのポイント
中小企業がリスキリングに取り組むにあたっては、下記の3つのポイントを反映させた取り組みが求められる。
実践を通じてスキルを磨く
人員が限られている中小企業では、実践を通じてスタッフの能力を高める必要性がある。
例えば、新たに導入したシステムを使った顧客管理方法をシステム会社の指導のもと、実践的に習得するような機会を設けることだ。
また、社内DXを進めるにあたって、社内プロジェクトを立ち上げ、そのプロジェクトへの参画を通じて新たなデジタル技術を習得させる方法も有効だ。
経営者から社内DX化の必要性を発信する
中小企業では、経営者の発言や行動、姿勢が組織全体に大きな影響を与える。
そのため、経営者からスタッフに対して、全員がデジタル技術を学ぶ必要性を発信したり、経営者自身が学ぶ姿勢を見せることは、リスキリングの大きな推進力となる。
ITツールの利用に対して抵抗するスタッフもデジタル技術を学ばざるを得ない雰囲気を作る必要性がある。
スタッフのレベルに合ったリスキリングの機会をつくる
若手スタッフは、すでにITツールに触れる機会が多く、DX化に対してあまり抵抗感を示すことは少なくても、高齢のベテランスタッフの中には、ITツールに使い慣れていないスタッフも多く存在する。
スタッフの数の限られた中小企業では、社内DX化を特定のスタッフのみで推進しても、その効果が限定的になる。
全員のスキル向上を図るために、スタッフ一人ひとりのITスキルの棚卸を行い、レベルにあったリスキリングの機会をつくることが必要だ。
リスキリングを推し進めるためのポイント
ということで、最期にリスキリングを推し進めるためのポイントを紹介していこう。
1)実践を通じたアンラーニングの機会をつくる
アンラーニングとは、これまで得た知識やスキルを捨て、時代にあった新たな知識を取り入れることだ。
自身のこだわりや慣習に縛られていては、時代の変化が激しい昨今のビジネスシーンに対応することができない。
反対に、常に危機意識を持ち、アンラーニングを心掛けている企業は、時代の潮流に乗ることもできる。
コロナ禍において新規事業に乗り出す企業やビジネスモデルそのものを転換する企業があったが、まさにアンラーニングが正しく機能した例といえる。
ただし、アンラーニングを行う上で、学習スタイルには様々な形があるが、成人における学習に影響を与えた要素のうち、70%がその人の仕事を通じて得た経験と大多数を占めている。
残る20%は他者の観察やアドバイス、10%は能力開発の研修や書籍となっている。
2)学びへの動機づけを行う
外部環境の変化によって、新たな学びが大切であるということに異議を唱える方はいないだろう。
しかし、社内には現状維持思考の強いスタッフも少なからずいると思われる。
このようなスタッフをまずは学ぶことの必要性を動機づけなければいけない。
内発的は動機付けを個人に依存するのではなく、会社側がスタッフ同士のコミュニケーションの機会を増やし、刺激を相互にもらえるような機会をつくることが必要だ。
とある統計調査によると、自社において社内コミュニケーションに課題があるかについては、ややあると思うが46%で最も多かった。
また、大いにあると思うの23%と合計してあると思うが69%とほぼ7割となっている。
内発的動機づけを行うために下記のような機会を設けるといいだろう。
- 1on1面談やコーチングを通じ、自身が会社でどのような成長を遂げたいのか
- どのような貢献をしたいのか
- そのためにどのような知識の習得が必要であるのか
会社が用意した高度な研修プログラムに参加させる前に、なぜそれを学ぶ必要があるのか、という自らの動機を形成することが重要だ。
まとめ
リスキリングについて解説したが、いかがだろうか。
リスキリングという概念を知らなかったという人には少しは参考になったと思うので、実践すべき環境にある企業は実践していくことをオススメする。
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