斬釘截鉄(ざんていせってつ)
→ クギや鉄を断ち切る意から、毅然とした態度で決断力があること。
決断力は大切だ。
ただただ決断するだけでなく、その決断するまでのスピードも重要であることは度々主張していることだ。
スタートアップにおいては、とりわけスピード重視の決断は重要だと説いているが、なにもそれはスタートアップだけではない。
グローバル企業であっても挑戦を続けている企業のスピードはやはりはやい。
そう感じさせてくれるグローバル企業の1つが、誰もが知っているAmazon(アマゾン)だ。
Amazonは多くのプロダクトに挑戦しては撤退をしている企業としても有名だ。
その中のプロダクトの1つである、Amazon Go(アマゾン ゴー)を知っているだろうか。
知らない人のために簡単に説明すると、レジなしのコンビニがテーマというとイメージしやすいのではないだろうか。
stak, Inc. はstakという、機能拡張モジュール型IoTデバイスを主軸商品として世の中に便利な瞬間を追加しようとしている。
そんなスタートアップのCEOとして、Amazon Goにはずっと注目している。
ということで、最新のAmazon Goの状況について、まとめていこうと思う。
無人店舗の発祥 Amazon Go(アマゾン ゴー)とは?
無人店舗の存在を聞いたことがあるという人はここ数年で増えたはずだ。
日本国内でも試験的に運用を始めているところも増えてきており、近未来的な店舗に期待値が高まっているのも事実だろう。
その先駆けともいえる存在が、誰もが一度は使ったことがあるショッピングサイト、Amazon(アマゾン)が仕掛けた、Amazon Go(アマゾン ゴー)だ。
カメラ、センサー、AIといった最新技術によって物理的なレジや決済行為自体をなくしてしまうというスマートで画期的な買い物体験の創造ということで、Amazon Go登場したのは2018年だった。
日本での体験としては、コンビニをイメージするといいだろう。
今までのコンビニだと、カゴに商品を入れたり、手に商品を持ってレジに向かい、現金、カード、電子マネーなどで決済をするというフローだった。
それが、自分の欲しい商品をそのまま店外へ持ち出せば決済も終わっているというのだから、小売り業界やIT業界のみならず世の中を騒がせたのは安易に想像できるだろう。
実際に、Amazon Goを利用するためには、事前にアプリをダウンロードし、クレジットカード情報の登録が必要になる。
その後、入店時にアプリからQRコードを立ち上げ、ゲートにかざすと入店できる。
入店後は商品を手に取って店を出るだけで精算が完了するという極めてスマートな購買体験を可能にしている。
と同時に、どうやって決済処理をしているのか、在庫管理はどうしているのか、レジが不要ということで本当に人件費カットできるのかといった疑問も多々生まれた。
あれから、5年目を迎えた今、日本ではほどんどAmazon Goのことが取り上げられていない。
ということで、無人店舗運営は上手くいっていないと思っている人は案外多い。
ただ、それは大きな間違いだ。
無人店舗運営の実態
Amazon Goが仕掛けた無人店舗だが、実はこの分野では様々なスタートアップが世界的に立ち上がって、各社が様々なアプローチで着実に拡がりを見せている。
とりわけ、欧米では少しずつ浸透しており、Autonomous Store(オートノマス ストア)と呼ばれるのが一般的となっている。
直訳すると、自律型店舗といったところだろうが、無人店舗と紹介される場合も当然ある。
けれども、無人店舗と呼ばれた場合にも、必ずといっていいほど、セキュリティー担当者がゲート前に立って万引き防止や入店時のサポートをしている。
また、店舗内にも広さに応じて数人のスタッフがいるのがほとんどで、商品の品出しや陳列、アルコールコーナーの前では年齢のチェックをしており、完全無人ではない。
このことから、無人店舗という紹介よりも、自立型店舗という名称を用いた方が誤解が少ないように思う。
日本では無人店舗という強烈なインパクトのある名称がインプットされたことにより、店内や店外に少しでもスタッフがいることで違和感を覚える人がいるのかもしれない。
そして、それが無人店舗ではないという評価になり、興味が薄れているという実態がある可能性がある。
ということで、私も今後は自立型店舗という表現を用いていこうと思っている。
人がやるべきところは人が行い、自動化できるものは自動化するといったように、合理的に考えようという啓蒙が必要だということである。
Amazon Go(アマゾン ゴー)の今
それでは、Amazon Goの実態について書いていこうと思う。
上述したとおり、2018年に第1号店をオープンしてから、2020年6月にはアメリカのシアトル、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨークの4都市で26店舗を運営するという情報までは拾える。
その後、大幅に店舗数が増えているという情報が入ってこないので、上手くいっていないと思っている人も多いのが実態なのだろうが、それは間違いだ。
すでに店舗ソリューションであるAmazon Go以外にも、Amazonのレジレス決済システム、Just Walk Out(ジャスト ウォーク アウト)を導入している小売店舗は複数ある。
この決済システムは、アメリカのみならずヨーロッパを合わせると90店舗以上が展開されているの。
未だに社内コンビニでの展開など実証実験の域を出ないものが多い日本とは、全く異なる状況になっているということを知っておいた方がいい。
Amazon GO(アマゾン ゴー)の3つの進化
ということで、Amazon Goの進化を3つ紹介していく。
1)多種多様な店舗フォーマットへの対応
Amazonがが買収した高級スーパー、Whole Foods Market(ホールフーズ マーケット)は2022年2月、上述したAmazonのレジ決済システムのJust Walk Outを採用した店舗をオープンした。
初出店に選んだ場所はワシントンDCで、約2,000㎡の広い店舗の天井に4,000~5,000台の膨大な数のAIカメラが天井に設置されている。
Just Walk Outの技術はAIカメラのコストが増えるこを理由に比較的、狭小店舗向きと考えてきた。
大型店舗では、スーパーマーケット業態のAmazon Fresh(アマゾン フレッシュ)店舗で活用されている、Amazon Dash Cart(アマゾン・ダッシュ・カート)を導入してきた。
Amazon Dash Cartは、搭載したカメラと重量センサーでカートに入れられた商品を認識する。
そして、自動でクラウド上のカートに商品が入り、Dash Cart専用レーンを通過することで自動精算される仕組みだ。
このように店舗のサイズに合わせて、ソリューションの使い分けをしていくのがAmazonの戦略だと思いきや、大型店舗にもJust Walk Outを採用したのである。
というのも、Just Walk Outは各商品の重さや商品パッケージなどの見た目、重量センサー付きの棚のどこに位置しているのかがデータベースに登録されている。
それから、該当の棚の上から商品がなくなると、重量センサーでどの商品が取られたかを、天井のAIカメラで誰が取ったのかを判別している。
となると、量り売りなどが導入されている大型店舗では、この仕組みは相性が悪いように思われる。
そこで、下記のフローを導入したという。
まず、あらかじめショーケース内にある総菜の総重量を登録しておく。
そこから取り分けたグラム分がテークアウトパッケージに入れられたのかを計算するという仕組みだ。
さらに、アプリ不要でクレジットカードのみでの入店を可能にしたり、非接触の手のひら認証、Amazon One(アマゾン ワン)での入店も可能になっている。
セルフレジも併設されているので、他の店舗よりも消費者に選択肢が与えられていることにも注目したい。
このように、自立型店舗といえばコンビニのような箱をイメージしがちだが、大型店舗にも対応できるようにディテールの進化が著しい。
2)Just Walk Outの外販
何度も登場している、Just Walk Out(ジャスト ウォーク アウト)システムの外販にも注目したい。
例えば、アメリカにおいては、ガソリンスタンド併設コンビニチェーンのQuick Trip(クイック トリップ)に導入されている。
また、イギリス国内では、Tesco(テスコ)やAsda(アズダ)に次ぐ大手スーパーであり、BIG4の一角であるSainsbury’s(セインズベリー)なども路面店で導入済だ。
そして、インパクトがあるのは、アメリカの空港や駅のターミナルでコンビニを展開するHudson News(ハドソン ニュース)が展開する、Hudson Nonstop(ハドソンノンストップ)だ。
空港の搭乗ゲート前の通路に、細長の空間に仕切られた約30㎡の店舗を構えている。
Amazonアプリ、クレジットカード、Amazon Oneによる入店も可能でレジレスなため、搭乗時刻ギリギリでもスムーズに買い物できるのがユーザを喜ばせているという。
3)買い物体験の多様化
最期に、Amazon Goと異業種のコラボレーションにより、2021年11月にオープンした新業態店、Starbucks Pickup with Amazon Goにも注目したい。
ニューヨークにあるこのStarbucks(スターバックス)は、事前のモバイルオーダーのみに対応したピックアップ専用店舗だ。
その特徴は、受け取りカウンターの奥にイートインスペースを備えていることだ。
イートインスペースでは、80㎡ほどのスペース自体がドーナツやサンドイッチなどの軽食、飲料を取りそろえたAmazon Go店舗となっている。
あらかじめモバイルオーダーでStarbucksのコーヒーを注文しておき、それをピックアップした際に小腹がすいていれば、そのままAmazon Goに入店できるというわけだ。
棚から好きなサンドイッチを取り、イートインスペースで飲食を楽しめるし、もちろん、サンドイッチの料金はAmazon Goから退店すれば自動決済される。
このように、他のブランドとのコラボによって買い物体験の多様化を進めている。
まとめ
2023年1月現在のAmazon Go(アマゾン ゴー)の実態についてまとめてみたが、ポジティブなことばかりが目立つ。
一方で、まだまだ課題があることも知っておいた方がいい。
それは、Just Walk Out技術のコストを96%削減したという発表だ。
これだけ見ると、店舗運営コストがかなり削減されたように思えるが、その解釈は危険だ。
1,000平方フィート(約30坪)の店舗の推定年間運用コストが15万9,000ドル(約2,400万円)にまで低下したという内容が実態である。
つまり、1ヶ月あたり、1万3,250ドル(約200万円)というコストがかかっているので、まだまだ安価とはいえない。
そのコストのほとんどは、AIカメラによる画像分析のところで、まだまだマンパワーが必要となっているところにある。
こういった課題がどのように改善されていくのか、引き続き、自立型店舗の動きを注視したいと思う。
そして、チャンスがあれば、stak, Inc. としての運営も是非やってみようと考えている。
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