山藪蔵疾(さんそうぞうしつ)
→ 大人物は多少の欠点はあってもそれを包み込んでしまう度量がある一方で、優れたものにも多少の欠点はあるということ。
大物にはカリスマ性があるということなのだろうが、この傾向はなにも人だけではないように思う。
企業も多少大味なところがあっても、結局は強いという、いわゆる優良企業がある。
一昔前には、この話題で持ちきりだったGAFAMと呼ばれる企業はまさにといったところで、すでに世界中のインフラになっているといっても過言ではない。
そんな誰もが知っているグローバル企業の中で、大味だと思う企業はGoogleだ。
Google(グーグル)という企業
名前くらいは誰もが一度は聞いたことがある企業だと思うが、Google(グーグル)は1998年にアメリカで生まれた企業だ。
スタンフォード大学の博士課程に在籍していたラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって創業され、現在でも2人合わせて16%の株式を保有している。
そんなGoogleをインフラまでに押し上げたのは、検索エンジンと広告だ。
ググるという言葉が浸透したとおり、まさにGoogleの本業というかコアなビジネスは検索とそれにまつわる広告だ。
もちろん、それ以外の事業も進めているが、Googleはある意味でエンジニア泣かせな企業としても有名だ。
というのも、新しいサービスを始めるのだが、途中でやめるということも多々ある企業で、なかなか検索と広告を中心としたビジネスモデルからの脱却ができていない企業でもあるからだ。
- Google Answers
- Lively
- Google Glass
- Google Buss
- Google Play Edition
- Google Wave
- Google Video
- Nexus Q
- Google X
- Google Health
- Google Reader
- Google Catalogs
- Google Hangouts On Air
- iGoogle
- Orkut
- Google Notebook
- Google+
このようにザッと挙げただけでもこれだけ終了したサービスがある。
中には継承されたサービスもあるが、華やかさをイメージする企業である一方で、多くの失敗事例も抱えているグローバル企業だということができるだろう。
まあ、Googleほどのグローバル企業であっても、なかなか新しいサービスを世の中に浸透させることは難しいという見方もできるわけだが、圧倒的にカバーしているのが検索と広告のコアビジネスなのだ。
そして、上述したサービスの中にシレッと入れたが、Google VideoはGoogle独自の動画配信サービスだった。
ただ、2006年にとある企業を買収したことで、実質お役御免となっていったわけだ。
その企業は、みなさんご存知のYouTubeだ。
Googleの2022年第3四半期(2022年7月~9月)のスコア
Googleを傘下に持つ、アメリカのAlphabetが2022年10月25日に2022年第3四半期(2022年7月~9月)の決算を発表した。
売上高は前年同期比6%増の690億9,200万ドル(約10兆2,300億円)、純利益が同27%減の139億1,000万ドル(約2兆600億円)だった。
増収率は過去9四半期で最低で、5四半期連続の低成長となった。
また、これで3四半期連続の減益だ。
全体の約8割を占める主力ネット広告事業の売上高は、同2.5%増の544億8,200万ドル(約8兆700億円)にとどまった。
このうち、検索連動型広告の売上高は同4.3%増の395億3,900万ドル(約5兆8,600億円)で、動画共有サイトYouTubeの広告売上高は同1.9%減の70億7,100万ドル(約1兆500億円)だった。
YouTubeの広告収入が2%減と、YouTube広告とGoogle Cloudの売上高を開示するようになった2019年第4四半期以来初めての減収になったというのが現在地である。
YouTube広告について
上述したとおり、Googleのコアビジネスである広告事業の中でも大きなセグメントを占めているYouTube広告だが、減益となっている。
とはいえ、現在の広告のプラットフォームとしては欠かすことのできないものになっていることは事実だ。
実際、日本でのマーケティングファネルの最上段の認知を目的とした活用は国内利用者数が7,000万人を超えていて、マスメディアと捉えてもなんら問題のないものになっている。
かつては、広告経由の直接購入を狙った活用はそぐわないといわれてきた。
というのも、YouTubeの利用者は動画の閲覧を目的としているため、動画内に挿入される広告を見て、動画の視聴をやめてまで広告の誘導先を訪れる人は少ないと考えられていたからだ。
ところが、その常識は過去のものになっていて、今や企業の戦略としてYouTube広告への出稿はマストだといってもいいほどだ。
YouTube広告には、4つの誤解があり、それを紐解いていくことで、より効果的に活用することができることがわかってきたからだ。
1)複数のクリエイティブをAIに競わせればよい
1つ目の誤解は、配信対象や訴求軸を明確にせず、アイデア勝負だけでAIに競わせても頭打ちになるということだ。
動画広告は静止画の広告に比べて、改善すべきポイントが非常に多い。
静止画の広告であれば配信対象、商品写真、キャッチコピーなどの組み合わせ程度だといえる。
ところが、動画ではそれらに加えて動画の構成、ナレーションの内容、テロップの文面など、変数が多く複雑になる。
重要なのは、Who(誰に)とHow(どんな手段で)だ。
クリエイティブを制作する前に、まずは広告対象となる商品を誰に届けたいのかを明確にする必要がある。
対象者を明確にすることで、どのようなメッセージや動画内容で伝えるべきかといった訴求軸の仮説を立てやすくなる。
そして、その仮説をどの配信フォーマットを使っていくのかを考えていく必要がある。
- TrueViewインストリーム広告
動画中に差し込まれる広告のことをいう。
動画本編前の広告をプレロール、再生途中に挟み込まれる広告をミッドロール、動画本編終了後の広告をポストロールと呼ぶ。
- インフィード動画広告
YouTube内の検索結果や関連動画一覧などに表示される広告で、ユーザが広告をクリックすると再生が始まる。
- バンパー広告
スキップできない代わりに最大で6秒間と非常に短い広告。
1つ目の誤解を正の方に導くには、まず配信対象、訴求軸、配信フォーマットを定める。
その上で、ナレーションの内容を複数パターン作成して比較したり、アニメと実写で表現方法を変えたりした複数のクリエイティブに繋げるというわけだ。
2)テレビCMをそのまま転用はご法度
1)で述べた配信対象や訴求軸の明確化は、テレビCMとも近いということから、そのままYouTube広告に転用するという企業もある。
これは大きな誤解で、テレビCMはすべて放送されることが前提のため、起承転結でつくられていることが多い。
一方で、YouTube広告は興味を持たれなければ起の時点でスキップされてしまうという特徴がある。
広告接触者の95%は最初の5秒で離脱するという統計があるともいわれており、最初の5秒で何を伝えるかが極めて重要になるということを覚えておきたい。
3)広告は短尺でなければ完全視聴されない
そして、3つ目の誤解は長尺のYouTube広告は見られないという誤解だ。
というのも、2)で述べた5秒の壁を乗り越えた後は、離脱率が大きく下がる傾向があるからである。
視聴者にとって興味のあるコンテンツであれば見続けてくれる。時間の長さはあまり広告効果に影響を与えないということはしっかりと認識しておきたいところだ。
4)バンパー広告で購入促進を狙う
くり返しになるが、バンパー広告とは、スキップできない代わりに最大で6秒間と非常に短い広告のことだ。
スキップされないからということで、このバンパー広告のみを活用するということが4つ目の誤解なのである。
バンパー広告は短時間でブランド名や商品名を刷り込む認知拡大に効果的な広告だということを認識すべきなのだ。
バンパー広告は時間が短く、クリックする猶予がないためサイトへの誘導には向かないため、直接購入を期待するのは、広告商品の使い方として間違っているということを知っておこう。
Googleが提唱するABCDフレームワーク
最期に、Googleが自ら必勝のフレームワークとして提唱しているのが、ABCDフレームワークだ。
このABCDフレームワークに沿うと、デバイスを問わずに成果が出るというのだから、知っておくべきだろう。
A = Attract(惹きつける)
YouTube広告の視聴者は大半が最初の5秒で離脱することは先述したとおりだ。
そのため、いかに大きなインパクトを与えて興味を持ってもらうかが重要になる。
ということで、具体的には下記を挙げている。
- 構図:商品・人物にかかわらず、被写体をアップで使用する
- ペース:冒頭5秒間に2つ以上のショットを入れる
- 人物:出演者がいる場合は、最初から登場させて、その人物から直接視聴者に語りかけるのも効果的
B = Brand(ブランド)
次に、動画のはやい段階で頻繁に、そして十分にブランドを認知してもらうことが重要になることを意識する。
- 紹介:最初の5秒以内に商品またはブランドを紹介する
- 強調:ロゴの表示
- 位置:ロゴの表示位置は中央から左
上記を意識して、YouTubeのインターフェースを考慮した紹介が重要なのである。
C = Connect(繋がる)
そして、ブランドストーリーと視聴者の感情を結び付けることが重要になる。
- 惹きつける:ブランドに合ったアクション、ユーモア、好奇心などの感情に訴える手法を活用する
- 関連付ける:人物をストーリーの中心に据えると視聴者を引き込むことができ、感情的な繋がりが築ける
このあたりのストーリーとの繋げていくことが大切だ。
D = Direct(誘導する)
最期は、成果につなげるためのアクションを視聴者に対して明確に提示して、行動を促すことを意識することだ。
- 提示する:テキストカードなどを使ってオファーや行動を促すフレーズを提示する
- 動機付ける:期間限定、無料モニターといった、お得感や限定感を与えるオファーを行う
- 行動を促す:Webサイトにアクセス、お申し込み、今すぐ購入といった、行動を促す明確なフレーズを表示する
最終的に、いかに誘導していくのかを考えて実際に誘導することができなければ意味がない。
より具体的に誘導する戦略を練っていくことが最期に重要な課題となる。
まとめ
可処分時間でYoutubeを見る割合が多いという人も増えたはずだ。
と同時にYouTube広告を見る機会が増えたという人も多いと思うし、実際に同じような広告を見るという話もチラホラ聞く。
YouTube Premiumで広告をスキップしているという人もいるが、個人的には広告を見れる環境の方がオススメだ。
というのも、どんな広告が流行っているのか、どういった広告なら目に留まるかといった目線で広告を見ることができるからである。
いつ自分たちが広告を出す側になったとしても準備しておくことが大切だということだ。
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