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2022年10月28日 投稿:swing16o

労働人口の減少と高年齢者の活用について

涸轍鮒魚(こてつのふぎょ)
→ 危機や困難が目の前に差し迫っていること。

危機や困難ということで何度も議題として取り上げているというか、日本の少子高齢化に対して警鐘を鳴らしている機会は多い。

簡単に解決できる問題ではなく、時間がかかることは誰もが把握しているのだが、実際になにをしていくべきなのか、今回も少子高齢化の問題について触れていこうと思う。

人手不足を補うための1つの手段

なにか問題が発生したとき、一気に解決できることであれば一気に進めればいい。

けれども、社会問題のような様々な変数が入り混じっているような場合には、一朝一夕で問題が解決するわけではない。

少子高齢化の問題もまさに典型的だといえるわけだが、そもそもなにが問題なのか、まずは1つずつ課題を明確にする必要があるだろう。

そして、その課題に対してどういった対応をしていくのか、実際に行動を起こしていくことが次に求められる。

少子高齢化の問題については、その名のとおり、若者が減り年寄りが増えるという簡単な構想で、これが進むと単純に労働人口が減ってしまうということにある。

テクノロジーの進歩によって、様々な分野で自動化が行われ始めているが、まだまだスタンダードになっているとは言い難い。

stakもまさにIoTやAIといった分野に挑戦しているわけだが、キャズムを超えてくる予感はあれど、浸透するまでには少々時間がかかるというのが本音だ。

となると、その間に繋ぎが必要になるというわけだ。

端的に述べると労働人口を確保すればいいという話なのだが、その解決方法として高年齢者を活用するということが、人手不足を補うための手段としては、比較的すぐにできるという主張をしていこうと思う。

日本の生産年齢人口推移

日本では、生産年齢人口とされる15歳以上65歳未満の人口割合が、2065年には51.4% と約5割まで落ち込むと推測されている。

これは、2017年時には7,596万人で総人口に占める割合は60.0%なので、10%近くも下げてしまうという予測だ。

一方で、全人口に占める65歳以上の人口の割合は上昇を続け、2065年には38.4%と全体の4割近くに達する見込みだ。

つまり、テクノロジーの進歩や社会インフラが整うまでは、高年齢者を上手に活用することで生産年齢人口の補填をすることが、理にかなっていると単純に考えても不思議ではない。

というのも、そもそも定年という概念が少しずつ崩れ始めていることもあるし、65歳以上の人でまだまだ現役で働けるという人も日本には多くいるということだ。

もちろん選択の自由が大前提だが、65歳を迎えたからといって急に働くことができなくなるとする方がナンセンスで、働きたいという人にはその機会を設けるべきなのである。

実際、厚生労働省が発表している、2020年の高年齢者の雇用状況の集計結果によると、高年齢者を65歳まで雇用するための高年齢者雇用確保措置については、大企業では99.9%、中小企業では99.7%が実施している。

雇用確保措置実施の内訳は下記のとおりだ。

  • 継続雇用制度の導入:76.4%
  • 定年の引上げ:20.9%
  • 定年制の廃止:2.7%

このデータからすると、65歳までの雇用確保は継続雇用制度の導入が圧倒的に多い状況となっていることが認識できる。

ただ、66歳以上の雇用継続希望者を対象とした雇用確保措置を実施している企業となると、33.3%と激減するのである。

実施している内容の内訳は下記のとおりである。

  • 定年制の廃止:2.7%
  • 66歳以上の定年:2.4%
  • 65歳以上の継続雇用制度か:7.5%

希望者が66歳以上になっても働ける企業は、全体の12.6%に留まっているという結果が出ているのだ。

65歳以上の高年齢者の実態と企業の対応

高年齢者の約4割が65歳を超えて就業することを希望しているという統計データがあるように、高年齢者の就労意欲は決して低くない。

こうした背景から、働く意欲のある高年齢者が培ってきた能力を十分に発揮できるよう、高年齢者の活躍の場を整備することが重要だということで、高年齢者雇用安定法が改正された。

その結果、これまでの高年齢者雇用安定法による65歳までの雇用確保を義務から、改正後は70歳までの就業機会の確保を努力義務となった。

それに伴い、企業は高年齢者の特性を理解した上での仕組みづくりが必要になっている。

ということで、70歳までの雇用推進に向けて必要な考え方や対応についてまとめたのが、下記の4つのポイントだ。

  1. 経営者自ら高年齢者雇用の意義を理解し主導する
  2. 高年齢者の多様性を知る
  3. 高年齢者の強みを活かす仕組みをつくる
  4. 高年齢者雇用は全ての社員へのメッセージ

それぞれ具体的に掘り下げていこう。

経営者自ら高年齢者雇用の意義を理解し主導する

高年齢者雇用の先進企業では、経営者が高年齢者雇用を推進しているという傾向が強い。

人件費負担増の懸念と実態は避けられない中でも、経営者の決断により社員に理解を求めているというわけだ。

経営者の積極的関与が高年齢者雇用推進のカギを握っているというわけだ。

高年齢者の多様性を知る

高年齢者を活かすためには、高年齢者が年齢を重ねることで多様性が増すことを理解する必要がある。

もちろん、高年齢者に限った話ではないのだが、高年齢者に負担のかからない職場環境を整備したり、勤務形態を充実させるなどの対応が効果的となるわけだ。

高年齢者の強みを活かす仕組みをつくる

高年齢者にいきいきと働いてもらうためには、高年齢者の強みを活かせる役割を担ってもらうことが重要になる。

つまり、本人の意欲を高めるためには、高年齢者の企業に対する貢献度を評価できる人事制度を整備し、新たに役職を付与することも有効となるだろう。

高年齢者雇用は全ての社員へのメッセージ

高年齢者雇用の取り組みは、若年中堅の社員にとっても自分たちの将来を見据えたときに重要な道標となる。

取り組み如何によって、社員の会社に対する信頼感が高まることもあれば揺らぐこともあるだろう。

つまり、モチベーションを上げたり維持をしていく上で、高年齢者雇用には会社としてのメッセージが込められたものでなければならず、全ての社員がそのメッセージを注視しているというわけだ。

高年齢者の雇用による措置

ということで、高年齢者の雇用による措置について書いていくが、3つの選択肢があることを理解する必要がある。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度を導入

この中でも、2. の定年制の廃止は比較的簡単に導入ができるところだが判断が難しいというところになると思う。

となると、1. か3. のいずれかの選択肢をとることになるだろう。

ということで、両者を比較していくとする。

70歳までの定年引上げ

  • 定年年齢:65〜70歳
  • 雇用区分:正社員
  • 契約期間:70歳までは期間の定めなし
  • 役割:企業により異なる
  • 労働時間:フルタイム(残業あり)
  • 賃金形態:月給、日給
  • 賃金額:企業により異なる
  • 賞与:あり
  • 評価:59歳以前と同様
  • メリット:労働者のモチベーションが高い、人材確保がしやすい、雇用管理がしやすい
  • デメリット:組織の若返りが遅れる、人件費が高騰する、人事制度の見直しが必要

70歳までの継続雇用制度を導入

  • 定年年齢:60歳
  • 雇用区分:嘱託社員など
  • 契約期間:1年更新
  • 役割:従前と異なる
  • 労働時間:フルタイムが基本だが短時間、短日も含む
  • 賃金形態:月給、日給、時給
  • 賃金額:公的給付支給を前提としている場合も多い
  • 賞与:ない場合もある
  • 評価:評価しない場合もある
  • メリット:組織若返りが図れる、賃金水準を抑えることが可能、人事制度の改定が限定的
  • デメリット:モチベーションが低い、雇用管理が複雑になる

このように、企業の実情に応じて年齢に関わらず、意欲と能力に応じて働き続けられる制度導入の検討が必要となるわけだ。

まとめ

高年齢者雇用促進に関して、政府は65歳以上の就業確保措置を実施する事業者に対する助成措置として、65歳超雇用推進助成金を策定している。

この助成金は、65歳以上への定年引上げ、高年齢者の雇用管理制度等の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換などの対応を行う事業者に対して助成するものだ。

そして、3つのコースから構成されている。

  1. 65歳超継続雇用促進コース
  2. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
  3. 高年齢者無期雇用転換コース

興味のある企業があれば、是非このあたりも活用して、賃金制度の見直しと併せて組織を一時的に編成してもいいだろう。

あくまで、一時的だとしたのは、高年齢者を雇用し続けていくことも重要だが、テクノロジーの進歩を拒むようなイノベーションのジレンマに陥らないようにしたいという意味を込めている。

 

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