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2022年7月15日 投稿:swing16o

炎上という言葉が市民権を得るまでの歴史

喧喧囂囂(けんけんごうごう)
→ 多くの人が、口々に喧しく騒ぎたてること。

字を見ればなんとなくわかるのが、騒ぎ立てるという中に怒りの感情が含まれているということだ。

今の時代でいうところの炎上という概念が近いのではないだろうか。

すっかり炎上という言葉が市民権を得ているのだが、そもそも炎上という言葉が登場したのはいつ頃だろうか。

インターネットの普及と比例するように炎上案件が増えていることは理解できると思うが、いつ頃から世の中で炎上という言葉が使われるようになったのか。

ということで、炎上という概念について書いていこうと思う。

炎上という言葉が一般化したタイミング

そもそも、インターネットが普及し始めたのは、インターネットバブルという時代が象徴するように、1990年代前記〜2000年代初期にかけてだ。

アメリカの市場を中心に日本でもインターネットバブルが起きて、インターネットが一気に身近なインフラになっていった。

ということは、この時代から炎上という言葉があったと考えるのが普通だろう。

結論からいうと、確かにその時代から炎上という言葉はあった。

けれども、1990年代に炎上という言葉が一般的だったかというと、まだまだそうではなく、◯◯祭りなどと称されることが多かった。

それでは、炎上という言葉がメディアのタイトルなどで使われるようになった、いわゆる一般的に使われるようになったタイミングはいつからなのだろうか。

実は、炎上という言葉が一般的になるきっかけとなった事件が存在するといわれている。

ウォークマン体験日記

(出典: Impress Corporation)

2005年の11月、SONYのブログプロモーションとして使われていた、ウォークマン体験日記というのが炎上の歴史の先頭にあるという。

AppleのiPodにシェアを奪われつつあったSONYが、ウォークマンのプロモーションの一環としてアップしたブログが標的となった事件だ。

詳細はリンク先を読んで欲しいが、このウォークマン体験日記は新製品発売から数日で閉鎖した。

そもそも、素人4人がウォークマンを使ってみた感想をリポートする内容だった。

ところが、素人とは思えない撮影テクニックを要する写真があったり、競合他社を暗にけなす記述があったりしたことが批判の的となったのである。

これをきっかけに、炎上という言葉が浸透していったとされている。

参考までに、それまでは炎上という言葉は野球で投手陣がめった打ちされる場面で、火だるまと同義で使われていた。

ウォークマン体験日記と同じ時期の出来事として、2005年10月のプロ野球日本シリーズが行われた。

千葉ロッテマリーンズ対阪神タイガースだったのだが、千葉ロッテの4連勝に終わり、阪神投手陣は4試合で33失点と打ち込まれたことから連日、炎上が記事見出しになっていた。

もしかすると、ウォークマン体験日記が炎上という言葉を生み出したのには、この日本シリーズも関係しているかもしれない。

初めてインターネット上で炎上した企業

また、企業がネット上で消費者から批判を受けて謝罪に至るという事件も明確にあるとされている。

東芝ビデオクレーマー事件

その元祖となったのが、1999年に起きたこの事件だ。

東芝製ビデオを購入した福岡市の男性A氏が、ビデオテープを再生した際に画面に出る白いノイズの修理を巡って口論となった。

東芝の担当者から浴びた暴言音声を録音、自身のホームページで公開したことから、ネット上が大騒ぎになったという事件だ。

暴言とされる内容は下記のとおりだ。

お宅さんみたいのはね、お客さんじゃないんですよ、もうクレーマーっちゅうの、お宅さんはね。じゃあ切りますよ、お宅さん業務妨害だから。

修理の内容に納得がいかないA氏がビデオデッキを社長宛てに送付するという行動に出たこともあって、通常の顧客窓口とは異なる部門が対応したことがトラブルを悪化させた。

最終的に東芝は会見を開き、副社長が全面的に謝罪している。

これがネット上での元祖炎上事件だ。

インターネット上の炎上事件の推移

このように炎上という言葉はインターネットの歴史と共に徐々に浸透していったというわけだが、上記のウォークマン体験日記事件のあった、2005年ごろから一般的になったいう解釈でいいだろう。

実際、総務省でネット上での炎上を巡る議論という統計データが登場し始めたのも2006年からとなっている。

ネット上での炎上を巡る議論

(出典:総務省)

この統計の基準となっている炎上の定義は下記のとおりとなっている。

  • ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態
  • 特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる状態

そして、2006年からの炎上発生件数推移は下記のとおりだ。

  • 2006年:41件
  • 2007年:67件
  • 2008年:78件
  • 2009年:90件
  • 2010年:102件
  • 2011年:341件
  • 2012年:380件
  • 2013年:483件
  • 2014年:667件
  • 2015年:1,002件

総務省のデータではここまでとなっているのだが、2011年あたりから一気に件数が増えていることがわかる。

このタイミングが、いわゆるモバイルシフトしたタイミング、つまりスマホが普及していったタイミングと一致する。

また、様々なSNSが普及し始めたタイミングとも一致する。

その後のデータは、デジタル・クライシス白書という白書でデータを見ることができる。

デジタル・クライシス白書では、SNS上で100件以上の言及がなされたネガティブ事象を炎上事案と定義している。

その定義に基づいてカウントすると、直近の3年は下記のとおりの件数となっている。

  • 2019年:1,228件
  • 2020年:1,415件
  • 2021年:1,766件

若干の定義が異なっているとはいえ、3年連続で件数の増加が見られるという結果になっている。

つまり、毎月100件程度の炎上案件は発生しているという計算になる。

ネット炎上の傾向

炎上件数の推移は上述したとおりで、次にその時代にどういった傾向の物事が炎上傾向にあったかをまとめてみよう。

〜2010年:芸能人のブログ炎上

この頃は、まだスマホが普及する前の時代で、炎上といえばブログ炎上を指すことがほとんどだった。

また、ブログ炎上にも大きく分けて2通りあった。

  1. ブログ投稿の内容自体が批判されるケース
  2. 投稿内容とは関係なく、この人に一言物申したいとコメント欄に集まるケース

ブログにコメントが大量に寄せられると、祭り、ブームとして、雪だるま式にコメントが増えるという流れがほとんどだった。

さらに、過熱して誹謗中傷に発展するケースが多数見られた時代だ。

2011〜2012年:ステマ炎上

2011年ごろからスマホが普及したのは前述したとおりで、このあたりから炎上件数は急増していることも書いた。

2012年には、ペニーオークション詐欺事件が発生し、多くの芸能人が宣伝だと明示せずに炎上した。

いわゆるステルスマーケティングを行っていたことが発覚して話題になり、この頃から、ステマという言葉が浸透していった。

また、この頃も引き続き芸能人のブログも炎上していたのだが、一般人も炎上するようになっていく。

その背景にあったのが、SNSの普及で、いわゆる誤爆といった感じで投稿してはいけない内容を送ったりといった具合だ。

2013年:バイトテロ事件

従業員が業務上不適切な行動を行っている写真をSNSに投稿するという、いわゆるバイトテロが最も多発したのは2013年だった。

コンビニのアイス用冷蔵庫に入る写真が話題になったのをきっかけに、従業員が不適切な行動を行っている事例が次々に発見されたことを覚えている人も多いだろう。

2014〜2015年:異物混入

このあたりから、企業の炎上が目立つようになってくる。

そのパターンは大きく分けて3つのパターンに分類される。

  • 企業アカウントからの失言や、誤投稿がきっかけで批判されるケース
  • 企業の不適切な行動が告発されて、批判されるケース
  • 企業や団体の広告が賛否両論となるケース

今振り返ると、このあたりから企業側が過剰に謝罪する傾向が生まれていったように思う。

2016年:一般人の投稿がきっかけとなる議論型炎上

芸能人の不倫や、政治家の不適切発言などは、相変わらず注目を集める話題で、2016年にも多くの批判を集めるニュースが報道されている。

一方で、この年には、一般人からの発信をきっかけとして起こった、いわゆる議論型炎上が増えた年でもある。

代表的なのは「保育園落ちた日本死ね」というブログで、こちらも覚えている人も多くいるのではないだろうか。

2015年前後に増えたバイトテロ事件とは全く性質が異なり、賛否両論により議論を巻き起こすというのが特徴の議論型炎上が増えたのが2016年の特徴だ。

2017年:YouTube炎上

この年は、人気YouTuberのスキャンダルや疑惑などが話題になった1年だったといえるだろう。

また、#MeToo運動が話題になった年でもある。

ちなみに、#MeToo運動とは、様々な要因によって性暴力やセクハラの加害者を告発できなかった被害者が連帯して告発しようというムーヴメントのことだ。

2018〜2019年:内部告発

このあたりに注目されたのが、内部告発によるパワハラやセクハラといった類の炎上だ。

◯◯ハラスメントという言葉が次々に生まれていくきっかけになったのが、まさにこの頃のタイミングだ。

それから、ジェンダー問題が注目を浴びるようになったのも、まさにこの時代だといえる。

2020年:パンデミック

この年は新型コロナウイルスに関する炎上が多かった1年だ。

そして、フェミニズムへの関心が強まった1年でもあるといえる。

ジェンダー問題も引き続き炎上事件として増加傾向にあるといえる。

まとめ

炎上の歴史について、まとめてみたがいかがだろうか。

振り返ってみると、2005年あたりから炎上という言葉が浸透していくようになってから、20年も経っていないのに炎上という概念は一種のカルチャーになっていることがわかる。

その形も少しずつ変化があって、ビジネスにも活用しようとするところからもまた変化が起ころうとしている。

やはり、ときには立ち止まって歴史を振り返ることで見えてくることもあると改めて感じた次第である。

 

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植田 振一郎 Twitter

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