【Day 14/66|1日1マーケ用語】極端の回避性(松竹梅の法則)——いつも「竹」を選ぶカナの話

【Day 14/66|1日1マーケ用語】極端の回避性(松竹梅の法則)——いつも「竹」を選ぶカナの話

今日の主役は、お得と流行に弱いふつうの会社員・カナ。
彼女がレストランで「いつもの選択」をした話から見ていきましょう。

極端の回避性(松竹梅の法則)に引っかかるカナの4コマ・起
カナ「松は高いし梅は不安…無難に真ん中の竹にしておこっ」

わかります、その気持ち。
いちばん高いのは贅沢すぎる気がするし、いちばん安いのは品質が心配。
「真ん中なら、損も後悔もしなさそう」——とても安心できる選び方ですよね。

極端の回避性(松竹梅の法則)に引っかかるカナの4コマ・承
カナ「いつも真ん中ばっかり選んでる気がする…ほんとに竹が一番よかった?」

冷静に考えると、不思議ですよね。
料理によって食べたいものは違うはずなのに、なぜか毎回「真ん中」を選んでいる。
それは、自分の好みではなく、「3択の中での位置」で決めているからです。
私たちは、両端という“極端”を避けたいあまり、中身を見ないまま真ん中に逃げ込んでしまうのです。

極端の回避性(松竹梅の法則)に引っかかるカナの4コマ・転
カナ「えっ、私が選んだんじゃなくて、選ばされてたの…!?」
サトル「それ、極端の回避性だよ。松竹梅の法則だね。人は両端を避けて真ん中を選ぶ。店は売りたい物を真ん中に置くんだ。」

種明かしです。
カナを動かしたのは竹の中身ではなく、「真ん中という安全地帯」でした。

極端の回避性(松竹梅の法則)に引っかかるカナの4コマ・結
カナ「“真ん中だから安心”をやめて、中身で選べばいいんだ…!」

そういうことです。
ここからは、この「極端の回避性」をもう少しくわしく解きほぐしていきます。

極端の回避性とは?

極端の回避性(extremeness aversion)とは、複数の選択肢の中で、人は最も極端なもの(最高額・最安値)を避け、中間を選びやすくなる傾向のことです。
「妥協効果(compromise effect)」とも呼ばれ、日本では「松竹梅の法則」として広く知られています。
価格や品質に幅のある選択肢が3つ並ぶと、上は「高すぎ」、下は「安かろう悪かろう」と感じ、真ん中が「ちょうどいい妥協点」に見えるのです。
比率としては、松竹梅で「2:5:3」あたりに落ち着くといわれ、真ん中がいちばん選ばれます。
だから売り手は、本命を真ん中に据え、その上下に“両端”を用意します。

なぜ“真ん中”を選んでしまうの?

理由のひとつは、「損をしたくない」という気持ちです。
いちばん高いものを選んで「払いすぎた」と後悔するのも、いちばん安いものを選んで「ケチって失敗した」と思うのも、どちらも避けたい。
真ん中は、その両方の後悔から守ってくれる“安全な逃げ場”に見えます。
もうひとつは、判断のラクさです。
中身を一つひとつ吟味するのは大変なので、「両端でなければ大丈夫」という簡単なルールに頼ってしまうのです。
こうして、選んでいるつもりで、実は「並びの構造」に選ばされてしまいます。

極端の回避性の身近な例は?

わたしたちの身の回りは、巧みな“3択”だらけです。

  • コース料理(松・竹・梅):本命を竹に置き、いちばん注文を集めます。
  • 飲食店のサイズ(並・中・大):真ん中を標準にして選ばせます。
  • サブスクの3プラン:松(高機能)と梅(最小)の間に、売りたい中位プランを置きます。
  • 家電やPCのグレード:松竹梅の3モデルで、利益率の高い中位機へ誘導します。
  • 寿司・うなぎの「特上・上・並」:多くの人が真ん中の「上」を選びます。

選択肢を3つに整え、本命を真ん中に置くだけで、選ばれる確率は上がる。
売る側はこれを知っていて、メニューの構成そのものを設計しています。

極端の回避性が強く効くのはどんなとき?

同じ3択でも、効き方には強弱があります。
まず、その商品にくわしくないときほど強く効きます。
判断基準がないと、「真ん中=無難」というルールに頼るしかないからです。
次に、後悔したくない気持ちが強い場面(接待、贈り物、初めての店)で効きます。
失敗を避けたいほど、安全な真ん中に流れます。
逆に、「自分が何を求めているか」がはっきりしているときは、両端でも迷わず選べます。

引っかからないための3つのコツ

  1. 「自分が欲しいのはどれ?」を先に決める。並びを見る前に、目的をはっきりさせます。
  2. 各選択肢を単体で評価する。「これは、3,000円の価値がある?」と1つずつ問います。
  3. 「真ん中だから」を理由にしない。位置ではなく中身を選ぶ理由を、ひとつ言葉にします。
  4. ときには両端を選んでみる。本当に上が必要なら松を、十分なら梅を、堂々と選びます。

コツは、「3択の位置」ではなく「自分の目的」をものさしにすることです。

ビジネスでどう使う?(誠実な使い方)

極端の回避性は、使う側にも回せます。
選択肢を整理し、お客様が選びやすい3段階にするのは、立派なサービス設計です。
本命プランを真ん中に置き、上下に比較対象を用意するのは有効です。
ただし、真ん中に「中身の伴わない割高な商品」を置けば、お客様はあとで「損した」と気づきます。
誠実な使い方とは、どの段階を選んでも価格に見合う価値があり、真ん中が本当に「ちょうどいい」と納得できる設計にすることです。
売り手の都合だけで真ん中を決めると、信頼は長続きしません。

よくある質問(FAQ・全6問)

Q1. 極端の回避性とおとり効果(Day13)は何が違う?

極端の回避性は「両端を避けて真ん中を選ぶ」傾向そのものです。
おとり効果は「明らかに劣るおとりで、特定の本命をお得に見せる」仕掛けです。
どちらも3択を使いますが、効いている心理(極端の回避か、比較での誘導か)が違います。

Q2. 松竹梅は、必ず竹が選ばれる?

必ずではありませんが、多くの場面で真ん中が最も選ばれます。
ただし価格差や品質差の付け方次第で、比率は変わります。
極端さを感じる並びほど、真ん中に集まりやすくなります。

Q3. 選択肢は3つがベスト?

真ん中を選ばせたいなら、3つが扱いやすい数です。
2つだと「真ん中」が生まれず、多すぎると選べなくなります(Day48「決定回避の法則」)。

Q4. 一度知れば、もう真ん中を選ばない?

完全には消えません。
「後悔したくない」という気持ちは根強いからです。
だからこそ「中身で選ぶ理由を言葉にする」習慣が効きます。

Q5. 真ん中を選ぶのは、いつも間違い?

いいえ、違います。
中身を吟味した結果、真ん中が最適なら、それは正しい選択です。
問題なのは、「中身を見ずに位置だけで」真ん中を選ぶことです。

Q6. 高いものを選ばせたいときは?

松(最上位)の上に、さらに高い選択肢を足すと、松が「真ん中」になり選ばれやすくなります。
これも極端の回避性の応用です。

まとめ

極端の回避性は、3択で両端を避け、無難な真ん中を選びやすい心理です。
「真ん中なら安心」と感じた瞬間こそ、「中身で選んでる?」と問い直すチャンス。
位置ではなく目的をものさしにすれば、メニューの構成に振り回されずに選べます。

🎯 今日の1手(実践)

今日出会った「松竹梅」や「並・中・大」の3択を、ひとつ思い出してみてください。
そして「自分が本当に欲しいのはどれ?」を、並びを見る前に決めてみる。
気になれば、「なぜ真ん中を選びたくなった?」と理由をたどってみてもいい。
位置ではなく中身で選ぶ感覚を、今日1回だけ体験する。
これが66日の14日目です。