栄枯盛衰(えいこせいすい)
→ 人の一生や世の中は、盛んな時もあれば衰える時もある。
様々なサービスが世の中に登場しては消えていく。
これはいつの時代にも起こりうることで、盛んになるサービスもあれば衰えていくサービスもある。
まさに、栄枯盛衰がくり返されている中、近年注目されていた戦いに一段落した業界がある。
それは、ORコード決済の業界である。
巨大企業の経営統合
2021年3月1日、Zホールディングス(ZHD)とLINEの経営統合が完了したという報道がされた。
Zホールディングスといえば、Yahoo!(ヤフー)を中核事業に持つ、ソフトバンクグループ傘下の持株会社だ。
この日本の巨大企業2つの経営統合が決まり、数年前から熾烈なバトルにも終止符が打たれた感じになっている。
そのバトルの舞台となったのが、QRコード決済にまつわるものだ。
経営統合で、いわゆるFintechはユーザのアクションに応じてローンや投資商品、保険などの提案するシナリオ金融を拡充すると発表している。
具体的には、PayPayとLINE Payの加盟店連携も開始し、2021年4月から300万ヶ所のPayPay加盟店のうち、ユーザースキャン(MPM)方式の店舗においてLINE Pay支払いが可能になっている。
LINEウォレットからのPayPay支払いにも対応予定で、さらに2022年4月を目処にLINE Payの国内QRおよびバーコード決済をPayPayに統合すべく、協議を開始した。
そして、PayPay加盟店において、LINE Payでの支払いが8月17日から可能になった。
ただ、この統合は、QRおよびバーコード決済部分のみという点には注意が必要だ。
クレジットカード、NFC、送金、請求書払い等はLINE Payとして継続するとしている。
その理由としては、特に海外はLINE Payが大きなシェアを持つためLINE Payを強化していく戦略にある。
LINE PayがPayPayに吸収されるわけではなく、アジア主要国での発展を目指していくということだ。
PayPay躍進の理由
PayPayは2021年9月末まで加盟店となる中小店舗から徴収する手数料を無料にすると宣言しスタートした。
その営業力は素晴らしく、加盟店は340万ヶ所まで急増し、QRコード決済の登録者数も4,100万人を突破して、国内No.1の地位を獲得した。
その勝因は、紛れもなく資本力と営業力にある。
当初の目標を達成したその力の源泉は、出資するソフトバンクグループ(SBG)、通信子会社のソフトバンク、Zホールディングス(ZHD)傘下ヤフーの総力戦にある。
2021年3月期のPayPayの営業損益は726億円の赤字を計上したが、大胆な営業費用を投じた結果でもある。
ソフトバンクの強さの源泉はこうした大胆な営業戦略にある。
その実績はPayPayだけではないことは、歴史を振り返ると理解できる。
今から20年前の2001年、ソフトバンクはブロードバンド通信事業に参入した。
そのときに打ち出した戦略が街頭でモデムを無料配布するというものだった。
今回のPayPay参入のとき、動員されたのが当時の営業員だったのである。
当初は10人程度の人員だったが、PayPayサービス開始前には500~600人まで拡大。
現在は外部も含め全国で3,000人規模にのぼるとのことだ。
国内全域を区分けするというローラー作戦で、営業員が店舗をくまなく回るのが特徴だ。
取扱高の大きい大手加盟店の開拓と並行して、日常でも使ってもらえるよう消費者の生活圏に近い中小店舗の手数料は3年間無料にして顧客網も広げた。
営業力と手数料ゼロが両輪となり、テレビCMなどを通じて知名度を獲得した結果、爆発的に普及した。
繰り返しになるが、その戦略はソフトバンクの成功方程式をPayPayに当てはめたのである。
QRコード決済の行方
QRコード決済はシェア争いから、マネタイズに向けたフェーズを迎えた。
2021年に入ると、今までは導入側が手数料無料キャンペーンを謳っていた姿が一変、各社が一斉に手数料を発表した。
- PayPay:会員数4,100万人、加盟店340万ヶ所、手数料1.6/1.98%
- LINE Pay:会員数4,000万人、加盟店405万ヶ所、手数料2.45%
- d払い:会員数3,735万人、加盟店352万ヶ所、手数料2.6%
- au Pay:会員数2,700万人、加盟店440万ヶ所、手数料2.6%
- メルペイ:会員数1,067万人、加盟店234万ヶ所、手数料2.6%
- 楽天ペイ:会員数非公開、加盟店500万ヶ所、手数料3.24%
業界最大手となったPayPayは、ライバルNTTドコモなど通信系競合各社も手数料を低く抑える業界最低水準を発表した。
クレジットカード会社が取り込めきれていない小規模店舗を獲得するためである。
クレジットカード会社の手数料の半値を目安にしつつも、競合各社をしのぐ水準の1.6%。
価格破壊を武器にする路線はなお続けるという戦略だ。
PayPayの2021年10月から切り替える有料化路線は転機を迎える公算が大きい。
すでに大手加盟店の手数料は有料だが、約340万ヶ所の半分を占めるとみられる中小店舗が少なからず離脱する可能性があると予想されているからである。
とはいえ、PayPay側としては、これまでなかった中小店舗からの手数料収入を見込めるため、新たなマネタイズの原資を手に入れることもできる。
加盟店と利用者のバランスを考え、採算を確保できるビジネスモデルを構築することが今後の課題といったところだ。
まとめ
そもそも、決済ビジネスは薄利多売とされる。
各社は加盟店から得る数%の手数料からポイントやシステム費用などを捻出する。
巨大決済市場である中国で、先行するアリババ集団系のスマホ決済であるアリペイの手数料は1%を下回る水準だ。
ただ、収益性の高い融資が収益を押し上げてきた。
PayPayもを含めた日本のサービス各社も今後は店舗向けローンなど金融サービスの裾野を広げる必要に迫られると見られている。
一方で、加盟店をつなぎ留める努力がなければ、こうしたネットワークビジネスは収益構造はつくれない。
日本の根強い文化として現金主義があり、ちょっとした機会の操作を嫌う人たちも多い。
さらに手数料を工数に置き換えるという概念に行き着かない人たちも多いので、完全に定着するまではいま一歩といったところだろうか。
もちろん、私自身はどんどん活用するし、QRコード決済のみの世の中になったとしても大歓迎である。
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