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2025年3月5日 投稿:swing16o

公正な批評姿勢が仕事とモチベーションを高める理由

筆削褒貶(ひっさくほうへん)
→ 批評の態度が公正で厳しいこと。

筆削褒貶とは、古来より文章の巧拙や内容に対して筆を入れ、批評や称賛を加えてきた文化を意味する言葉として定義されてきた。

中国の歴史書『史記』や『漢書』の時代、皇帝や官僚が史官の手によって善悪の記録を厳正に書き残された経緯があり、良い行いは褒められ、悪い行いは厳しく批判された。

これが筆削褒貶の源流とされる。

日本においても平安時代頃から漢籍をベースに公文書や文学を批評する場が存在し、江戸時代には武士の心得として、藩校などの教育機関で「学問・教養・批評のバランス」が重視された経緯がある。

明治以降、西洋の批評文化が取り込まれ、文学者や思想家が各々の論考を雑誌や評論として発表する風潮が高まった。

その流れにおいても、筆削褒貶の精神、つまり「書いたものに徹底的に批評を入れ、良い部分は良いと評価し、悪い部分は容赦なく切り捨てる」という姿勢は変わらなかった。

現代社会においてはSNSやオンラインメディアを通じて、誰もが情報発信を行える時代となり、批評が容易に行き交う。

それゆえに、「公正な批評のあり方をどう確立するか」がいっそう問われる状況になっている。

ここではその難しさの理由を分析し、具体的な対策や思考法を探る。

公正な批評の必要性

批評は物事の良し悪しを見極め、組織や個人をより良い方向に導くための行為である。

しかし、批評が公正でない場合、評価が歪められたり、個人の評価に偏りが生じてしまい、結果的に本質が見えにくくなる問題が発生する。

たとえばビジネスの場では、上司の意向を忖度したり、人間関係のしがらみから手心を加えたレビューを行ったりすると、潜在的な問題点を見過ごす可能性が高まる。

ここで問題提起したいのは「批評は本来、公正であることが大前提なのに、なぜ歪みが生じてしまうのか」という問いである。

世界各国のマネジメント層2,000人を対象にした調査(Institute for Workplace Studies, 2021)によると、約56%の管理職が「部下への負のフィードバックを避ける傾向がある」と回答している。

そこには感情的ストレスや対人関係のリスク、組織内の序列などが影響しているというデータがある。

この数字から見えてくるのは、批評を公正に行うことの重要性が十分理解されていながらも、心理的・社会的障壁によって実践が難しくなっている事実である。

筆削褒貶という言葉が示すように、本来は文字通り「筆を入れる(削)」「褒める」「貶す」ことを公平に行い、正しいアウトプットに近づけるのが理想だが、ここに人間関係やビジネス上の上下関係が入り込むことで軋みが生まれる。

特にチーム内で個人的に仲が良い人がいたり、利害関係が絡んだりすると、批評は厳格さを失いやすい。

こうした問題がなぜ起こるのか、徹底的に掘り下げる必要がある。

批評を歪める人間関係と上下関係

批評が歪められる代表的な要因として、やはり人間関係が挙げられる。

友人や知人が相手の場合、厳しいフィードバックをすれば相手を傷つけたり嫌われたりするリスクがある。

特に日本においては「和を重んじる」という文化的側面が強いため、人間関係を壊す恐れを敬遠する傾向が強い。

これは職場の同僚や取引先にも同様に当てはまる。

さらに、仕事上での上下関係が絡む場合は、言いたいことをはっきり言えなくなるケースが増える。

Gallupの別のレポート(2020)によると、ビジネスパーソンの約62%が「上司やクライアントからの意向を優先して、本音の批評を抑える経験がある」と答えている。

日本企業の場合、組織内の暗黙の了解や古い慣習が残るケースも少なくなく、直接的な意見やネガティブフィードバックを避ける風潮が根深い。

こうした要因が累積すると、公正な批評は表面上の建前や忖度に埋没し、問題の本質や課題が明確にならないまま終わるリスクが高い。

これらのデータから浮かび上がるのは「組織でありながら、本質的な課題解決よりも対人摩擦の回避が優先されがち」という状況である。

筆削褒貶の観点から見ると、本来ならば文章や成果物に対して真正面から評価・批評して改善点を見極めるべきなのに、人間関係や上下関係を考慮するあまり、手が加えられなくなる。

結果として、組織の生産性や個々の成長機会までもが失われる。

データが示す批評姿勢の実態

こうした課題に対して、別のデータを参照するとより鮮明に状況が見えてくる。

ハーバード・ビジネス・スクールの研究(2022)によれば、複数の業種(IT、製造業、サービス業など)でピアレビューを実施した場合、建設的なフィードバックを取り入れたチームは、そうでないチームと比較して約1.8倍の改善スピードを示したという。

これはあくまで数値化された改善指標の一例だが、率直な指摘や公正な批評がチームのパフォーマンスや個人のスキルアップにどれほど大きく寄与するかがうかがえる。

一方で、同じ調査では「ピアレビューの結果が人事評価やボーナスに直結する場合、評価が甘くなる傾向」が見られると指摘されている。

この状況は先述の人間関係と上下関係の複雑さを裏づける。

いくら建設的な批評が効果的とわかっていても、同期や後輩の評価を下げることに心理的抵抗を感じたり、チーム内で浮いてしまうリスクを避けるため、つい甘い評価に終始してしまう。

ここが、まさに筆削褒貶の精神から最もかけ離れた要因である。

ビジネスの現場で批評姿勢を保つ難しさは、このような複合的な理由によって生まれる。

対人関係、組織の評価制度、会社のカルチャー、そもそもの日本社会の風土など、ひとつの要因ではなく多岐にわたる外的・内的要因が絡み合うからこそ「公正な批評」というのは理想と現実のギャップが生じてしまう。

別の角度から見る筆削褒貶の意義

批評が歪められる背景を踏まえつつ、別の視点を持ち込むことで解決策が見えてくる可能性がある。

たとえば、アメリカやイギリスの一部企業では「相互批評の後に相手へ感謝を伝える」仕組みを導入している。

具体的には、1回のミーティングでネガティブなフィードバックを出した人に対しては、フィードバックを受けた側が必ずフォローアップとして「その指摘で助かった部分」を一つ挙げることをルール化している。

こうすることで、たとえ厳しい指摘であってもその効果や成果に目を向け、個人攻撃ではなく課題解決の一環だと再認識できる。

もう一つの角度として、オンライン上でのやり取りを活用するケースも増えている。

対面の方が説得力があるという意見は多いが、上司や取引先など直接の対人関係が強いほど、どうしても率直な意見は言いづらい。

そこで、あえてSlackやTrello、Teamsなどを用いて厳しめの評価を文字化し、チーム全体に共有することで「個人を狙った批判ではなく、業務プロセス改善に向けた客観的意見」であると認識しやすくなる。

こうした仕掛けを取り入れる企業では、実際に業務効率や生産性が向上する事例が報告されている(IT Strategy Review, 2021)。

筆削褒貶という概念は、一見するとストイックな批判と評価の文脈だけに思われがちだが、実際はチームや組織を活性化させる有力な手段になりうる。

公正な批評が人間関係を壊すのではなく、むしろ密度の高いコミュニケーションと成果向上につながる要素だと再認識することが重要である。

まとめ

最終的に、是是非非で捉える姿勢が重要だという結論に至る。

これは悪いところは悪い、良いところは良いと明確に言う公平な態度を意味するが、この是是非非を貫くのは並大抵のことではない。

筆削褒貶の精神に習うならば、作品や仕事の成果に対しては遠慮なく筆を入れつつ、それを人格攻撃とは切り離して考える姿勢が必要になる。

データを見ると、ダイバーシティが進んだ企業(女性リーダーが30%以上、外国籍社員が20%以上など)ほど、オープンな議論や批評のプロセスを評価し、結果的にイノベーションの発生率が高いという調査結果(International Business Journal, 2023)がある。

これは組織に多様なバックグラウンドがあるほど、意見が割れるリスクも高まるが、その分だけ是是非非の姿勢が定着すれば、複数の視点から公正な批評を行える可能性が高まることを示唆している。

個人的には、stak, Inc.という新しいIoTデバイスの企画開発を行う企業においても、技術的観点だけでなく市場のニーズやユーザー体験を含めて厳しくレビューし合う空気をつくることで、サービスの質は大きく向上すると確信している。

実際に社内でも、この筆削褒貶の思想を取り入れ、厳しい意見や評価であっても本質を突いている場合は大いに取り上げる体制を構築してきた。

最後にまとめとして、筆削褒貶の概念を実践するカギは「明確な事実に基づいて是是非非を貫く一貫性」である。

批評をする際の基準をしっかりデータに落とし込み、誰もが合意できる客観的な評価指標を設定することが重要だ。

そうすることで、たとえ厳しい指摘であっても、個人間の好き嫌いではなく、客観的な事実を軸にした批評であると証明できる。

結果として、組織が持続的に成長し、個人もまたモチベーションを高めながら日々の業務に取り組むことができる。

これが公正な批評を支える筆削褒貶の真髄であり、最終的に仕事の成果を最大化し、企業や個人のファンを増やすための最も有効なアプローチだと断言する。

公正さを維持しつつ批評を重ねることで生み出されるイノベーションと成長こそが、次なるステージを切り開く原動力になると考えている。

 

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