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2024年8月22日 投稿:swing16o

最も近い星と最も遠い星から学ぶブランディング戦略

掉棒打星(とうぼうだせい)
→ 棒を振り回して夜空の星を打ち落とそうとする意から、無駄な労力を使うことや事が思い通りにならず、もどかしいこと。

掉棒打星(とうぼうだせい)という言葉は、古代中国の諺に由来する。

棒を振り回して夜空の星を打ち落とそうとする行為を指し、無駄な労力を費やすことや、思い通りにならない状況を表現する。

この言葉の最古の用例は、唐代の詩人・白居易の作品「長恨歌」に見られる。

「天上白玉京、十二楼五城。仙人抚我顶、结发受长生。误逐世间乐、致使神仙怒。威怒抛掉杵、故来打银屏。」という一節がある。

ここでの「掉杵」(杵を振り回す)が、後に「掉棒」として定着したと考えられている。

この諺が生まれた背景には、人間の欲望と自然の壮大さの対比がある。

古代中国の天文学では、星は天帝の住まう場所とされ、神聖かつ手の届かない存在だった。

それにもかかわらず、人間が棒で星を打ち落とそうとする行為は、人間の傲慢さと無力さを同時に表現している。

掉棒打星の概念は、ビジネス世界にも重要な示唆を与える。

非現実的な目標設定や、リソースの無駄遣いの戒めとして捉えることができる。

例えば、2000年代初頭のドットコムバブルは、多くの企業が現実離れした成長予測に基づいて投資を行い、結果的に大きな損失を被った事例だ。

一方で、この言葉は「高い目標に挑戦する勇気」の象徴としても解釈できる。

スティーブ・ジョブズの「Stay hungry, stay foolish」という言葉にも通じるものがある。

ジョブズは、不可能と思われることに挑戦し続けることで、アップルを世界最大の企業の一つに成長させた。

実際、ビジネス界では「掉棒打星」的な挑戦が大きな成功を生んだ例も少なくない。

例えば、イーロン・マスクの宇宙開発企業SpaceXは、当初は「狂気の沙汰」と言われたが、現在では NASA と並ぶロケット打ち上げ能力を持つまでに成長している。

夜空に輝く星の正体:恒星、惑星、そして人工衛星

一般に「星」と呼ばれるものには、実はいくつかの種類がある。

それぞれの特性を詳しく見ていこう。

1. 恒星

自ら光を放つ天体。

太陽もこの種類に含まれる。

恒星は核融合反応によってエネルギーを生成し、数百万年から数百億年の寿命を持つ。

夜空で見える星の大半は恒星だ。

例:シリウス(おおいぬ座の主星)
地球から8.6光年の距離にあり、夜空で最も明るく見える恒星。
表面温度は約9,940ケルビンで、太陽の約2倍の質量を持つ。

2. 惑星

恒星の周りを公転する天体。

地球や火星、木星などがこれにあたる。

惑星は自ら光を放つわけではなく、恒星の光を反射して輝いて見える。

例:金星
「宵の明星」「明けの明星」として知られ、満月を除けば夜空で最も明るく見える天体。
地球から最も近いときで約3,800万km、最も遠いときで約2億6,100万km離れている。

3. 人工衛星

人間が打ち上げた衛星。

国際宇宙ステーション(ISS)などが該当する。

これらも太陽光を反射して輝いて見える。

例:国際宇宙ステーション(ISS)
地球の低軌道を周回する有人宇宙施設。
高度約400kmを時速28,000kmで周回しており、条件が整えば肉眼でも観測可能。

これらの「星」の多様性は、ビジネスにおける市場セグメンテーションの重要性を想起させる。

一見同じに見える顧客群も、実は異なるニーズや特性を持っていることがある。

例えば、スマートフォン市場では、一般消費者向け、ビジネスユーザー向け、ゲーマー向けなど、様々なセグメントが存在する。

アップルは iPhone を、サムスンは Galaxy シリーズを、それぞれのセグメントに合わせて多様化させている。

また、これらの「星」の特性の違いは、ビジネスにおける「コアコンピタンス」の重要性も示唆している。

恒星が自ら光を放つように、企業も独自の価値を生み出す能力が必要だ。

一方で、惑星のように他者の光を反射して輝く戦略、つまりパートナーシップやエコシステムの活用も有効な戦略となりうる。

最も近い星との驚きの距離:4.2光年の壁

夜空に手が届きそうに見える星だが、実際の距離は想像を絶する。

最も近い星との距離を詳しく見ていこう。

地球から最も近い恒星は、ケンタウルス座アルファ星系のプロキシマ・ケンタウリだ。

この星までの距離は約4.2光年。

1光年は光が1年間に進む距離で、約9.5兆キロメートル。

つまり、プロキシマ・ケンタウリまでの距離は約40兆キロメートルになる。

この距離を現在の最速の宇宙船で移動すると、約3万年かかる計算になる。

具体的には、2018年に打ち上げられたパーカー・ソーラー・プローブが記録した最高速度(秒速430km)で移動した場合の計算だ。

比較のために、より身近な天体との距離を見てみよう。

1. 月:約38万km
アポロ11号は約3日で到達(1969年)

2. 火星:最接近時で約5,600万km
NASA の火星探査機 Perseverance は約7ヶ月かけて到達(2020年)

3. 太陽:約1億5,000万km
パーカー・ソーラー・プローブは約7年かけて太陽に最接近する予定(2025年)

プロキシマ・ケンタウリの特徴:
– 赤色矮星で、太陽の約8分の1の質量
– 表面温度は約3,042ケルビン(太陽の約半分)
– 少なくとも2つの系外惑星が公転している

この途方もない距離は、ビジネスにおける「市場の成熟度」と「参入障壁」を連想させる。

手の届きそうに見えても、実際に到達するには膨大な時間と資源が必要な場合がある。

例えば、電気自動車(EV)市場への参入を考えてみよう。

テスラが市場を切り開いてから約20年が経過し、多くの自動車メーカーが EV 開発に乗り出している。

しかし、バッテリー技術や充電インフラの整備など、克服すべき課題は多い。

トヨタ自動車の豊田章男社長(当時)が「EVシフトで日本の自動車産業が崩壊する」と警鐘を鳴らしたのは有名だ。

一方で、このような「遠さ」がブランド価値を高めることもある。

高級ブランドは意図的に「手の届きにくさ」を演出し、ブランドの希少性や憧れを維持している。

例えば、エルメスの「バーキン」バッグは、長い待機リストと高価格によって、ステータスシンボルとしての地位を確立している。

最も遠い星の衝撃的な距離:130億光年の彼方

では、最も遠い星はどれくらい離れているのだろうか。

その驚異的な距離と、それが持つ意味を詳しく見ていこう。

2022年4月、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって発見された「Earendel(イアレンデル)」という星が、現在知られている中で最も遠い星だ。

イアレンデルまでの距離は、なんと約130億光年。

つまり、約1,200,000,000,000,000,000,000,000キロメートル離れている。

この距離の壮大さを理解するために、いくつかの比較を示そう。

1. 太陽系の直径:約287億km
イアレンデルまでの距離は、太陽系の直径の約42億倍

2. 銀河系の直径:約10万光年
イアレンデルまでの距離は、銀河系の直径の約1,300倍

3. 地球の年齢:約46億年
イアレンデルの光が地球に届くまでにかかった時間は、地球の年齢の約3倍

イアレンデルの特徴:
– 質量は太陽の50倍以上と推定
– 表面温度は約2万ケルビン(太陽の約3.5倍)
– 重力レンズ効果によって約8.5倍に拡大されて見えている

この星の光が地球に届くまでに130億年かかっているということは、私たちが見ているのは宇宙誕生後わずか9億年頃の姿ということになる。

これは、宇宙の歴史のごく初期の姿を観測していることを意味する。

このような遠方の天体の観測は、宇宙の歴史や進化を理解する上で非常に重要だ。

例えば、初期の星がどのように形成され、どのような特性を持っていたかを知ることができる。

ビジネスの文脈で考えると、この「最も遠い星」の発見は、技術革新がもたらす新たな可能性を象徴している。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような最先端技術が、これまで見えなかったものを可視化し、新たな知見をもたらすのだ。

例えば、人工知能(AI)の発展は、ビジネスに革命的な変化をもたらしている。

自然言語処理の進歩により、ChatGPT のような対話型 AI が登場し、カスタマーサービスから創造的な作業まで、様々な分野で活用されている。

また、量子コンピューティングの研究は、現在のコンピュータでは解決不可能な複雑な問題を解く可能性を秘めている。

これが実用化されれば、創薬や金融工学、暗号技術など、多岐にわたる分野で革新が起こると期待されている。

このように、最先端技術への投資は、「見えなかったものを見える化する」可能性を秘めている。

それは新たな市場の創出や、既存の問題の革新的な解決につながる可能性がある。

星の神秘性:距離ゆえの魅力

星が持つ神秘的な魅力は、その途方もない距離に由来する部分が大きい。

この「手の届かなさ」が人々の想像力を刺激し、文化や芸術に大きな影響を与えてきた。

手の届かない存在であるからこそ、人々は星に夢や希望を託してきた。

古来より星座には物語が付与され、占星術も生まれた。

星座神話の例

1. オリオン座
ギリシャ神話の狩人オリオンを表す。
冬の夜空を代表する星座で、明るい星が多く、容易に見つけられる。

2. カシオペア座
エチオピアの王妃カシオペアを表す。
W字型の特徴的な形をしており、北極星を見つける目印にもなる。

3. 北斗七星(おおぐま座の一部)
中国では古くから方角を知る目印として重要視されてきた。
日本では「柄杓(ひしゃく)」の形に見立てられることも多い。

現代でも、「星に願いを」という言葉が使われるように、星は特別な存在だ。

七夕祭りや流れ星に願い事をする習慣は、星の神秘性を現代に伝える文化的実践と言える。

この「手の届かなさ」がブランド価値を高めることは、ビジネスの世界でもよく知られている。

高級ブランドは意図的に「手の届きにくさ」を演出し、ブランドの神秘性や憧れを維持している。

例えば、下記のブランディングが上げられる。

1. エルメスのバーキンバッグ:
長い待機リストと高価格設定により、希少性と憧れを創出。
2023年の調査によると、バーキンバッグの価値は過去10年で500%以上上昇している。

2. ロールスロイスの自動車:
「世界で最も静かな車内」をキャッチフレーズに、手の届かない贅沢を体現。
2022年の平均販売価格は約5億円で、年間販売台数を1万台に制限している。

3. パテック・フィリップの腕時計:
「あなたはパテック・フィリップを所有しているのではない。次の世代のために守っているのだ」というキャッチコピーで、永遠性と希少性を表現。
最も高価なモデルは数億円で取引されている。

ティファニーのCEOアントニー・レドフェルンは、「ラグジュアリーブランドの本質は、手の届きにくさと憧れのバランスにある」と述べている。

この言葉は、星の持つ魅力と通じるものがある。

さらに、星の永続性もブランド戦略に重要な示唆を与える。

星は何千年、何万年という時を経ても変わらぬ姿で輝き続ける。

これは、長期的なブランド価値の重要性を示唆している。

例えば、コカ・コーラは1886年の創業以来、基本的な製品フォーミュラを変えていない。

この一貫性が、ブランドの信頼性と永続性を支えている。

2022年の調査では、コカ・コーラは12年連続で世界で最も価値のあるソフトドリンクブランドとして評価されている。

また、星の普遍性は、グローバルブランドの戦略にも通じる。

星は世界中どこからでも見ることができ、その美しさは文化を超えて理解される。

同様に、成功したグローバルブランドは、文化の違いを超えて普遍的な価値を提供している。

例えば、アップルの製品デザインは、ミニマリズムと使いやすさを追求し、世界中で支持を得ている。

2023年時点で、アップルのブランド価値は約3,800億ドルと評価されており、世界最高額を記録している。

まとめ

掉棒打星の概念から始まり、最も近い星と最も遠い星の驚くべき距離を探ってきた。

これらの知見は、ブランディング戦略に重要な示唆を与えてくれる。

1. 高い目標設定の重要性:
掉棒打星は一見無謀に見えるが、高い目標に挑戦する勇気の象徴でもある。
ビジネスにおいても、「手の届かない」ような高い目標を設定することで、イノベーションが生まれる可能性がある。
例:イーロン・マスクの火星移住計画

2. 市場セグメンテーションの必要性:
星の多様性(恒星、惑星、人工衛星)は、顧客の多様性を想起させる。
一見同じに見える市場でも、細かくセグメント分けすることで、新たな機会を見出せる可能性がある。
例:ユニリーバの多ブランド戦略

3. 「手の届きにくさ」の戦略的活用:
星の神秘性が距離に由来するように、ブランドの価値も適度な「手の届きにくさ」から生まれることがある。
高級ブランドの戦略はこの好例だ。
例:フェラーリの限定生産モデル

4. 技術革新の重要性:
最も遠い星の発見が最新の望遠鏡によってもたらされたように、技術革新は新たな市場や価値を創造する。
継続的なイノベーションへの投資が、長期的な競争力につながる。
例:アップルのARグラス開発

5. ストーリーテリングの力:
星座に物語が付与されてきたように、ブランドにも強力な物語が必要だ。
顧客の心に響くストーリーを構築し、一貫して発信し続けることが重要。
例:ディズニーの「夢と魔法の王国」

これらの戦略を適切に組み合わせることで、「掉棒打星」のような一見無謀に見える挑戦も、ブランドの価値向上や市場開拓につながる可能性がある。

星は遠く手の届かない存在だからこそ、人々の心を捉えて離さない。

同様に、ブランドも適度な「憧れ」と「手の届きにくさ」のバランスを取ることで、持続的な価値を創造できるのだ。

最後に、天文学者カール・セーガンの言葉を引用して締めくくろう。

「私たちは星の物質でできている。我々の体は星の中で作られた原子からなる。」

この言葉は、私たちと星との深い結びつきを示唆している。

同様に、成功したブランドは顧客の人生と深く結びつき、その一部となる。

それこそが、真のブランド価値の本質なのかもしれない。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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