三舎退避(さんしゃたいひ)
→ この相手にはかなわないと恐れ逃げること。
知識が多い人は、ときとして敵をつくる場面も増える。
別にそんなつもりはないのに、議論の場において論破された場合、腹を立ててしまうというパターンだ。
私もしばしばそういう場面に遭遇することがあるのだが、核を突いてしまうことが原因だということはよくわかっている。
別に私自身が知識が抱負だと自慢をしているわけではなく、事実から目を逸らすことなく、しっかりと向き合う姿勢を自分自身への戒めにもしているのである。
そのためには、情報のインプットは欠かせないことは理解してもらえるだろう。
そして、インプットするだけではなく、しっかりとアウトプットすることで、博識な人だというイメージを持ってもらえる機会も増える。
stak, Inc. はここ最近、PRのカテゴリでの仕事も増えており、PRに欠かせないのが広告事業だ。
そんな広告事業の中で注目されているリテールメディアという概念をご存知だろうか。
今さら聞けないリテールメディアってなぁに?
Amazonやアメリカの大手スーパーのWalmart(ウォルマート)の広告事業が急成長している。
その強さの源泉は、ユーザの消費と密接に結びついた購買データから広告プラットフォームを構築した点にある。
こうした小売業者による広告事業が、リテールメディアと呼ばれている。
つまり、リテールメディアとは、小売りの広告メディア化を意味しているわけだ。
小売りの持つデータをベースにデジタル広告のプラットフォーム開発がリテールメディアの取り組みの中心になる。
どういうことかというと、今まではGoogleやFacebookのようなデジタル広告サービスへ広告を出していたという流れが変わり、小売り発で生まれているということである。
そして、リテールメディアは大きく2つにわけて整理しておくことが重要だ。
EC系リテールメディア
1つ目は、EC系リテールメディアで、Amazon、楽天、ZOZOなどが代表例だと思ってもらえるといいだろう。
そもそも、広告事業には広告を掲載する面と配信の仕組みの2つが必須だ。
そんな中、上述したようなEC事業者は、もともとECサイトという大きな顧客接点を持っている。
ということで、プラットフォーム自体を広告の配信面として活用するわけだ。
そして、EC系ということはデジタル事業なので、顧客のデータを多岐にわたって蓄積しやすいという特徴もある。
また、自社の販促のために、データを活用したメールマガジンを出したりといったことは頻繁に行われている。
となると、メルマガのような仕組みを広告に活用すれば、もう1つの配信基盤も整うことになる。
例えば、購買データに基づいた広告をECサイト上に設置した広告枠に配信したり、利用者が商品検索したキーワードに連動した広告を表示したりといった具合いだ。
要するに、広告配信の面となるデジタル上の顧客接点と、広告配信の基盤となるデータが必然的に揃っていたこともあり、広告事業を展開しやすかったというわけだ。
実店舗系リテールメディア
2つ目が、実店舗系リテールメディアで、その名のとおり実店舗を基盤にした広告展開ということになる。
とはいえ、1つ目に紹介したEC系リテールメディアでも書いたとおり、広告事業には広告を掲載する面と配信の仕組みの2つが必須だ。
ここに照らし合わせると、実店舗を持つ小売事業者はECに比べて、広告事業を展開するための要素が不十分だったので、ECに比べてリテールメディアへの参入が遅れたという実態がある。
というのも、広告を掲載する面は実店舗に設置して実店舗に来てくれる人たちに向ければいいのだが、配信の仕組みがなかったということだ。
それが、昨今のDXによって急速にデジタル広告事業の開発に必要な要素が整いつつあるというわけだ。
課題だった広告配信面だが、データやデジタルでの接点を複合的に活用することで、小売りが持っていたメディアとしての側面を増幅させることが可能になった。
実店舗系リテールメディア急成長の理由
わかりやすく、1つの企業の例を挙げるとすると、セブンイレブンに注目するといいだろう。
使ったことがある人も多いと思うが、セブンイレブンが展開している自社アプリは、1,800万人のユーザがいる。
このアプリが広告を配信する部分を担うというわけだ。
そして、広告配信の仕組みづくりに必要な要素が、リテールメディアの最大のポイントでもある購買データだ。
セブンイレブンには毎日約2,000万人が訪れ、買い物をしているという。
勘のいい人はすぐに理解できたと思うが、毎日膨大な購買データが生まれていることになるわけだ。
この購買データを活用しない手はないわけだが、従来のPOS(販売時点情報管理)レジでは、単にどの商品がいつ、どれぐらい売れたかしかわからなかった。
それを変革したのが、ID-POSだ。
ID-POSとは、その文字どおりID付きのPOSを意味していて、顧客に固有のIDを割り振り、そのIDにひもづく形でさまざまなデータを管理する仕組みだ。
ポイントカードを思い浮かべるとわかりやすいかもしれない。
カードに紐づけポイントを管理するためには、顧客をユニークにとらえる必要がある。
カード会員のIDに紐づけて購買データを取得することで、個々の購買履歴を分析できるようになったというわけだ。
かつてのポイントカードがアプリとなり急速に発展したのである。
それが、アプリ上に配信する特売情報やデジタルチラシの閲覧といった行動データと店舗での購買データを合わせて分析できる基盤の開発が可能になった。
データが小売りの収益化を実現
購買データや分析基盤は、かつては小売りが自社の販促活動などに活用するだけに留まっていた。
つまり、メーカーが直接的に自社のマーケティングのために小売りのデータを使うことはできなかったわけだが、そこにリテールメディアという概念が登場したわけだ。
小売りが広告という形で、取引先であるメーカーにデータ活用のサービスを提供するという発想が生まれたのである。
小売り側のメリットは、データを広告で収益化でき、出稿主の広告費で店舗に集客できるため売り上げ増加が期待できる。
一方で、出稿主となる企業はこれまで十分に活用できなかった小売りの購買データを存分に使える上、購買まで結び付いたかどうかまで検証できる。
このように、小売りと出稿主の双方にとってメリットを得られる期待から、リテールメディア開発の機運が高まっているというわけだ。
GoogleやFacebookといった、一般的なデジタル広告は消費者の性別、年代といった属性、Webサイトの利用履歴などの行動データを基に広告配信の対象者を絞り込む。
対して、リテールメディアは購買データを基に配信対象者を絞り込めるのが強みとなる。
具体的には、過去半年以上、自社商品を購入していない層、直近1ヶ月以内に競合商品を購入した層といった具合に対象者を絞って広告配信することが可能になる。
紹介したセブンイレブンは自社の購買データに基づき、メーカーのマーケティング目的に合わせて広告配信対象者を絞り込み、同社のアプリ内に広告を配信できるサービスを開発するという。
セブンイレブン以外の様々な小売りも、実店舗系リテールメディアとしての展開が始まっている。
まとめ
リテールメディアという概念について書いてきたが、いかがだろうか。
アメリカに端を発したリテールメディアだが、Amazonが2021年の決算で広告事業の売上高を初めて公表した。
その額は311億6,000万ドル(約4兆5,940億円)で、2021年の売上高が288億ドル(約4兆2,467億円)だったGoogleのYouTubeの広告事業を上回る規模になっている。
また、アメリカの大手スーパーのWalmart(ウォルマート)は、2022年2月17日に広告事業の年間売上高が21億ドル(約3,096億円)に達したと発表している。
日本国内でも、2022年の国内のリテールメディア広告市場は135億円だったのが、2026年には約6倍の805億円規模に拡大すると予測されている。
このリテールメディアという新しい広告の形は引き続き注目していくので、頭の片隅に置いておくべきだろう。
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