喜怒哀楽(きどあいらく)
→ 人間が持っているさまざまな感情。(喜び・怒り・哀しみ・楽しみ)
生活に完全に溶け込んだものがある。
いつでもどこでも半ば矯正的にしないといけなくなったマスクの存在である。
私は個人的に冬場から春にかけては風の予防や花粉症対策でマスクをしていたが、オールシーズンということはなかった。
それが今やいつでもどこでもマスクをしないといけなくなった。
正直、ストレスを感じる場面も多く、いつまでこの世界が続くのかウンザリすることもある。
とはいえ、もっと深い問題が発生していることがある。
マスク必着がもたらした変化
多くの人がこんな経験をしたことがあるはずだ。
マスクを外した瞬間に、全然思っていたイメージと違ったという場面に遭遇するということだ。
打合せで飲み物を飲む瞬間にマスクを外したときに、こんなにヒゲが生えてたんだいうような経験だ。
それから、人間の心理として、マスクの隠れている部分については勝手に美化する傾向にあるらしい。
なので、今や中高生の間で、こんなことが起きているときいた。
それは、お昼休みのランチタイムに気になった異性を見に行くというのである。
要するに、ランチタイムなのでマスクを外す瞬間を見に行って、そこで落胆するということが1つのムーブメントになっているというのだ。
傍からすると楽しそうと思ってしまうかもしれないが、この延長線上にあるもっと根深い問題が出てきているという。
保育士たちが現場で感じていること
保育研究プロジェクト子ねくとラボを運営する株式会社明日香が、現役保育士97人を対象にマスク着用による保育の変化にまつわる調査を実施した。
その結果、下記のような問題が生じていると回答している。
- 表情が伝わらないため子どもが表情から感情を学びとることができない:61.1%
- 読み聞かせなどの際に声が通りにくく、子どもたちが上手く聞き取れていない:58.9%
- 口の動きがわからないことで言語面での成長に影響がありそう:53.7%
- 昼食時に咀嚼方法を学ぶことができない:29.5%
他にも運動するときに息苦しいとか、マスクが嫌で外そうとするとか、表情が伝わらない、顔を覚えてもらえないといった課題も挙がっている。
マスクを着用した状況では、子どもたちと十分なコミュニケーションが取れていないと約3割の保育士が回答するというデータになっている。
赤ちゃんの特性に対する課題
特に生まれてから1歳くらいまでの時期の赤ちゃんとの接し方に注意が必要だという意見もある。
この時期の赤ちゃんは、いろいろな人の顔やその動きを見て表情を学び、そのとき重要なのが、目、鼻、口の3点だというのである。
3点すべてが揃って初めて赤ちゃんは、これは顔だと理解するようになる。
その後、数ヶ月かけて、笑ったり、怒ったりといった喜怒哀楽の顔の区別を学習していくといわれている。
こうして身につけていく、顔と表情を区別する能力は、相手の気持ちを理解する能力の土台となるわけだ。
つまり、赤ちゃんが表情に触れる機会を増やしていくことが大切だという見解だ。
家庭でも、家族がこれまで以上に表情を見せることを意識して欲しいというのだが、なんとなく理解できる話だ。
小学生の間で起きているコミュニケーションの壁
また、マスク生活による異変は小学校でも起きている。
ある小学校の休み時間に1年生の教室で起こった友達同士のケンカがある。
たまたま手がひっかかったことに、ひっかけた側の小学生はゴメンねと謝ったにも関わらず、マスクをしていたためか相手に伝わらず、ケンカに発展してしまったというのだ。
また、マスクをしているが故に、ちょっとしたことで相手が怒っていると勝手に思い込んでしまうということも起きているという報告もある。
ミュニケーションを通して、相手はどう思っているのか、自分はどのように振る舞ったらいいのかをイメージする能力は徐々に身についていく。
とりわけ、4歳から10歳くらいの子どもの脳は相手の視点に立って考えることを発達させる時期だという。
その大事な時期に顔の半分が隠されているのは、なかなかの問題だ。
様々な表情を読み取るという経験を重ねていかなければいけないのに、限定されてしまう。
大人であっても相手の表情が読み取りにくいというのも頷けるのに、経験値が低い子どもたちからするとより難しいというのは理解できるだろう。
丸の内勤務女性の約3割がしている経験
丸の内に勤務している女性111名に対する調査結果が出ている。
マスクをつけていて、顔の表情や感情についてなにか指摘を受けたことはあるかという問いに対して、約3割の女性があると回答しているのである。
具体的には、元気ないのかというのが64.7%、怒ってるのかというのが52.9%、調子悪いのかというのが26.5%という結果だ。
つまり、本人はなんともないのに勝手に相手にそう思われているということである。
これもコミュニケーションが取りにくくなっているというところでは子どもたちと共通しているだろう。
また、こういった経験があるが故に、指摘された女性の中の約3割が同じように指摘されないようになにかしらの改善を試みているというのである。
マスクさえつけなければ、必要のなかったことをやらなければならないというのもなんだか不条理に感じてしまう。
まとめ
当たり前のように、なにも考えずにマスクをつけるということが、弊害を生んでいることに警鐘を鳴らしたい。
もちろん、マスクをしなくてもいいとか、そういった過激なことをいうつもりはないし、最低限のマナーは守るべきだ。
けれども、思考停止した状態で周りがしているからといった安直な考え方や間違った正義感で縛ることが弊害を生む可能性があることも十分に理解した方がいい。
そして、こういった問題の怖いのは今すぐに目に見える課題としてハッキリしないことだ。
子どもが成長したときに感情が読み取れない大人が増えたとか、女性蔑視問題が酷くなるといった具合いに社会問題というのは遅れて可視化される。
社会問題を少しでも大きくしないためには、周りの様子を見ながらの決断ではなく、リーダーシップを発揮する人がいなければならないのである。
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