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2022年3月4日 投稿:swing16o

シェルのサハリン2撤退でざわつくエネルギー業界

棄甲曳兵(きこうえいへい)
→ 棄甲とは鎧を棄てる意で、戦意を失って逃げることをいう。

ロシアによるウクライナへの全面侵攻が、ここ数日のトップニュースを飾っている。

間違いなく歴史に残るこの戦争といっても過言ではない悲劇は、経済面でも大きな影響を与え始めている。

欧州連合(EU)とアメリカ、および同盟諸国はが、ロシアの複数銀行を国際決済システムであるSWIFTから切り離すことで合意すると発表して以来、ロシアの通貨ルーブルは暴落している。

他にも様々な国がロシアに対して次々に経済制裁を打ち出している。

そして、ついにエネルギー業界にも衝撃が走った。

サハリン2の撤退が衝撃を与えた日本のエネルギー業界

欧州を中心にロシア事業の撤退が相次ぐ中で、石油メジャーのイギリスのシェルも全面撤退を決めだ。

その中に、LNG(液化天然ガス)プロジェクトである、サハリン2が含まれていたことがエネルギー業界に衝撃を与えている。

サハリンといえば、北海道の北端からわずか50kmのところ位置する。

この地でLNGを開発や輸出するプロジェクトは当然日本にも縁が深い。

1994年に着手し、日本からも三井物産と三菱商事が出資している。

そして、このプロジェクトは年間生産量の960万トンの約60%を日本に送り込んでいる。

日本の輸入量がおよそ7,500万トンなことを考えると、約13%という割合になるので、単一プロジェクトとしての比重は大きい。

このサハリン2の撤退は商社だけでなく、輸入する電力ガス会社にも緊張が走り始めている。

口火を切ったイギリスのBP

口火を切ったのは、イギリスのBPだった。

BPはイギリスのロンドンに本社を置き、石油やガス等のエネルギー関連事業を展開する多国籍企業だ。

そのBPが、2022年2月27日に保有しているロシアの国営政府会社ロスネフチの株式(保有比率19.75%)をすべて売却すると発表した。

2021年で、この持ち分は約140億ドル(約1兆6,100億円)で、為替損などで損失は最大250億ドル(約2兆8,800億円)に上る可能性があるという。

さらに、世界80カ国を股にかけるBPの中でも、石油ガス生産の約3割をロスネフチに依存していたと聞けば、そのインパクトの大きさも伝わるだろう。

BPのロシア事業は、石油ガス買収の最高の成功事例としてエネルギー業界でも有名だ。

2004年〜2020年の間に配当だけで300億ドル(約3兆3,000億円)は稼いだとされている。

そうした約30年に及ぶ緊密な歴史も、ロシアの全面侵攻という事態を前に、全て清算されることになったわけだ。

追い打ちをかけるシェルの発表

BPの発表があった翌日の2022年2月28日。

シェルが動いた。

ロシア国営ガスのガスプロムと手掛けた4つの合弁会社から撤退するという発表をしたのである。

サハリン2の他に、ロシアとドイツをつなぐ天然ガスパイプラインのノルドストリーム2への資金供出も取りやめることになるとされている。

これにより、ノルドストリームは破産の可能性も示唆されている。

シェルのロシアへの投資額は約30億ドル(約3,300億円)で、今後減損が発生することになる。

ロシアに関わりが強い石油メジャーとしては、上記2社の他にフランスのトタル、アメリカのエクソン・モービルがある。

シェルに続くのではと特に注目を集めているのが、フランスのトタルの動向だ。

注目される日本の対応

シェルの撤退を受け、サハリン2に出資する三井物産と三菱商事はいずれも同じようなコメントを発表している。

シェルの発表内容を詳細に分析した上で、日本政府およびパートナーと今後の対応について検討を進めるというものだ。

そして、日本勢が関わるプロジェクトは、実はサハリン2だけではない。

エクソン・モービルがが主導した、サハリン1では、経産省、伊藤忠、丸紅による合弁会社が30%出資している。

また、北極海の新プロジェクトである、アークティック2もある。

2023年の稼働を目指すアークティック2は、日本政府肝いりのプロジェクトだ。

日本政府のプッシュもあって、三井物産がJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)との合弁会社を通じて10%出資している。

2011年の福島原発事故を受け、日本中の原発が停止する中で、日本は一気に火力発電大国となった。

その中でも、温室効果ガスの排出量が相対的に低いLNG火力への依存は一気に高まっていった。

ところが、当時日本は世界最大のLNG輸入国であり、産油国との長期契約で不利な条件をのむケースもあった。

そのため、調達先の多様化で、地政学リスクへの対処や価格交渉力の強化を図ろうとしていた。

その点で、ロシアへの参画には調達先の分散化という意義があったというわけだ。

本当の意味でのエネルギー確保

日本政府はサハリン2への影響について、現時点で日本のエネルギーの輸入に支障はないと発表している。

とはいえ、さらに事態が悪化してロシアからの供給に支障が出る可能性はあり得る。

長期的にロシアに頼らなくて済むエネルギー構成が重要になってくる。

ロシア以外から、LNGや石炭を輸入するという選択肢の他にも、そもそも電力における別の発電の比率を増やす方法も検討する必要がある。

まとめ

2022年という時代に、まさか戦争が起こるとは思ってもみなかった。

もちろん、紛争は世界中で起きているが、世界中が注目し日々様々なアップデートが報道されている現状がある。

正直、ロシアとウクライナの歴史的な関係を今回の戦争が起きるまでは知らなかった。

日本は島国で陸続きでないことから、他国に攻め込まれるという感覚がないといわれることが多い。

とはいえ、私の出身は広島で原子爆弾を投下された世界でも2ヶ所しかない場所のうちの1つだ。

そんな地で育っている関係もあり、広島では小学生の頃から平和教育に力を入れている。

ある意味で洗脳させる教育であることに少々嫌気が差していたのは事実だが、こうして戦争が実際に起こり、日々情報が入ってくるとなると、平和がいかに大切かがよくわかる。

当たり前の日常が、いかに幸せかということをもっと噛みしめた方がいいだろう。

 

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植田 振一郎 Twitter

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