百舎重繭(ひゃくしゃちょうけん)
→ さまざまな困難を乗り越えて遠路を行くこと。
百舎重繭という言葉は、中国の古い故事成語から派生した概念とされることが多い。
もともとの由来は、山道や険しい道のりを百の宿場(百舎)を超えて行くような壮大な長旅を指す表現であり、そこに“重繭”という「多くの苦難が重なり合う」というイメージが重なる。
要するに、長期的な道のりやプロジェクトには多くの困難が伴うため、一朝一夕で片づくものではないという考え方が根底にある。
これに近い発想として「はやく行くなら1人で行け、遠くへ行くならみんなで行け」というアフリカの諺が存在する。
一見すると「百舎重繭」とは離れているように見えるが、遠路を行くという発想と、協力やサポートが必要不可欠であるという認識は共通している。
多様な視点や助力を得ることでこそ、最終的に大きな成果へとつながる、という考え方に他ならない。
なぜこの概念が重要なのか。
人間の社会活動全般において、単独の成果には限界があるという事実は歴史を振り返れば明白だというデータもある。
たとえば2001年にアメリカの経営学者が調査したプロジェクト成功率に関する報告では、個人で行ったプロジェクトよりも、複数人によるチームプロジェクトの方が成功率で約1.6倍高い結果が出ている。
さらにIT分野のスタートアップを対象とした2015年の統計では、共同創業者のいる企業が最初の資金調達に成功する確率は単独創業のそれと比べて約2倍に上ると報告されている。
これらのデータは「みんなで行く」ことの優位性を裏づける一例と言える。
問題提起と視覚的にわかるデータ
現代社会では、スピードが求められる仕事が日常茶飯事になっている。
オンラインでのコミュニケーションやSNSによる情報拡散など、単独行動であってもある程度の成果が短期間で得られる土壌が整いつつあるのも事実だ。
一方で、本質的なブレイクスルーや長期的な成長を見据えたとき、短期的なスピードだけでは越えられない壁が立ちはだかる。
ここでの問題提起は「短期的なスピードを優先しすぎると、長い目で見たときに持続的な成長が損なわれるのではないか」という点にある。
具体的な比較データを示してみる。
・個人営業が中心の企業における年間売上の成長率:平均約8%(国内中小企業300社を対象とした2020年調査)
・チーム営業を導入している企業における年間売上の成長率:平均約14%(同調査)
この調査からわかるように、短期間の契約数やスピードに関しては個人営業が勝るケースもあるが、年間を通じた成長率という観点ではチーム営業の方がはるかに高い。
これこそ「はやく行くなら1人で行け、遠くへ行くならみんなで行け」という諺が指し示す通りの結果と言える。
世界の類似表現とデータから見る問題の現実
この問題をより深く理解するために、世界各地に存在する類似表現を徹底調査してみると興味深いものが見つかる。
たとえば、イギリスには“Many hands make light work.”という諺がある。
直訳すれば「たくさんの手があると仕事が軽くなる」という意味で、要は大勢で協力すれば一人あたりの負担は軽くなるという考え方だ。
また、ラテン語の“Unus vir nullus vir.”(一人は無人に等しい)という有名なことわざも存在する。
ここでは極端な言い方だが、個人だけでは大した力にならないという意味が示唆される。
これらの諺は、長期的に大きな目標を達成するには個人の力だけでは限界があるという問題を指摘している。
短期的なタスクや小規模プロジェクトであれば個人のスピード感が活きることもあるが、より大きな範囲や長期間の目標になるほど、どうしても協力体制が必要になる。
それでも、なぜ単独行動を好む人が多いのか。そこには以下のデータが示すように、さまざまな要因があると考えられる。
・個人主義が強い国(アメリカ、イギリス、オーストラリアなど)での「一人でやったほうが早い」と答えた人の割合:約65%
・集団主義が強い国(中国、日本、韓国など)での「チームでやったほうが結果的に効率が良い」と答えた人の割合:約70%
(いずれも国際調査機関が2020年に実施したグローバル調査より抜粋。集団主義・個人主義の傾向指数をベースに独自集計。)
このデータから見ても、文化的背景によって「スピードを重視するか」「結果的な遠くへ行く効率を重視するか」が変化する。
つまり、百舎重繭のように長い旅を想定するとき、文化的特性の違いが足枷になる場合もあれば、逆にチームワークの文化が活きる場合もあるわけだ。
データから見た別目線と事例の紹介
ここで別の視点からデータを見てみる。最近のスタートアップ界隈では、創業初期こそ1人で動きがちだが、事業が軌道に乗り始めると複数人で分業をすることで次のフェーズにスムーズに移行するという流れが定着しつつある。
これはstak, Inc.でも同様で、最初は少人数でアイデアを形にしてスピード感を重視しながら、必要に応じて専門性の高い人材を招き、協力関係を拡充することで遠くへ進む道筋を確保している。
具体的なデータとして、国内のベンチャーキャピタルが2021年に出したレポートによると、複数人のチーム体制へ早期に移行したスタートアップ企業(調達済み企業50社対象)は、そうでない企業(調達済み企業50社対象)に比べて
・シリーズAの資金調達成功率が約1.8倍
・3年目時点での売上高が平均で1.5倍
の差が見られたという。
ここから明らかなのは、リスクを取ってでも人を巻き込むことが、結果としてさらに遠くへ行く切符になるということだ。
単独でやれば早いかもしれないが、チャンスロスも大きい。
とはいえ、チームで取り組むからといって必ずしも成果が上がるわけではない。
人間関係の衝突や意思決定のスピード低下といったデメリットも無視できない。
だが、その調整コストを上回るメリットを得られるデータが大半であるため、遠くへ行きたいならば協力体制を整えることがベターな選択肢になると考えられる。
まとめ
ここまで見てきたように、百舎重繭という言葉が示唆するように、遠くへ行くには多くの困難が伴う。
複数人で行く旅は道中の衝突や意思疎通の難しさもあるが、最終的に一人では届かない地点まで到達できる可能性が高い。
特に「はやく行くなら1人で行け、遠くへ行くならみんなで行け」という諺の通り、スピードだけを求めるなら単独行動が合理的に見えるが、長期的な成果や大きなビジョンを実現したいときには人の力が必要になる。
現代のデータも、チーム体制による生産性向上や革新的アイデアの創出率の向上を示している。
たとえば、2022年に欧州の研究機関が発表したイノベーションに関する調査では、3人以上のチームが主導するプロジェクトの方が、個人主導のプロジェクトよりも約2.2倍の特許出願数を生み出しているという結果が出た。
ここにも「遠くへ行くには、複数人の視点を掛け合わせる必要がある」という事実が浮かび上がる。
結論として、百舎重繭のごとき長い道のりを歩むためには、一人の能力をいかに最大化するかだけを考えるのではなく、組織やパートナー、あるいは他のステークホルダーと力を合わせることが不可欠になる。
長期的に見た場合、スピードを捨てることではなく、必要に応じてスピードと持続力を両立させる選択が最終的に大きなリターンをもたらす。
個人的にもstak, Inc.のCEOとして、最初は少人数で走りながら、必要な人材を適宜巻き込み、最終的にはより遠くへ行くことを目指す戦略を取り続けたいと思っている。
世の中にはまだまだ同様の類似表現が埋もれているだろうが、その根底に流れる考え方はほぼ一貫している。
自分一人の力にこだわりすぎると、結局は到達点が限られる。しかし多くの視点や手を借りれば、百舎を超える重い繭さえも越えられる可能性が高まる。
そこに大きなロマンとビジネスチャンス、そして学びの種がある。
このブログを通じて、長期的なモチベーションを維持しつつ、さらに遠くへ行くためにどうすればいいかを考えるヒントになれば幸いだ。
そして、その一歩を踏み出してみようと決心してくれたなら、まさに「百舎重繭を行く者」への仲間入りということになる。
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