交通インフラである新幹線と空港がない4県とは?

有無相生(うむそうせい) → 有があってこそ無があり、無があってこそ有があるという、有と無が相対的な関係で存在すること。
日本で生活していると、各方面でインフラが充実しているので日々感謝するという概念は薄い。
電気、ガス、水道、インターネットなどなど、いわゆる生活インフラが当たり前に使える。
その価格も良心的で、ちょっとした災害があったとしてもすぐに復旧するシステムは純粋に素晴らしい。
敗戦国とは思えないくらいの復興を果たしていることにもっと感謝すべきだろう。
なにも生活インフラだけではなく、交通インフラも先進国の中でもトップクラスの発展をしている。
日本全国47都道府県のほとんどのところに空港や新幹線の駅がある。
日本の交通インフラ事情
交通インフラが充実していることで、人やモノが運べることが特別だと感じないことが、そもそも素晴らしい。
ましてや日本の交通インフラほど時間に正確に動いているものはない。
高学歴で優秀な人たちが分単位の時刻表を作り上げる盤石な体制を築き上げている。
新型コロナウイルスが世を賑わす前まで、日本中を縦断している新幹線は10分おきに出ていた。
待つという無駄な時間を過ごすことなく、駅まで行って切符を買えばすぐ乗れる。
オンラインで予約すれば切符を買う必要すらなくなっている。
それが本当に時間に正確に来るので、ちょっとでも遅れたりトラブルがあるとストレスに感じてしまう。
これは実はとても贅沢なことなのに、当たり前になっていることに感謝が薄れている良い事例だ。
それから、飛行機も新幹線に劣らず優秀な交通インフラとなっている。
新幹線の通っていないところにも空港があるので、全国どこにでも気楽に行ける。
国土が378,000km²しかないにも関わらず、約80ヶ所の空港がある。
例えば、人口が最も少ない鳥取県や島根県の日本海側のエリアに注目してみても5つの空港がある。
- 鳥取砂丘コナン空港
- 米子鬼太郎空港
- 出雲縁結び空港
- 隠岐世界ジオパーク空港
- 萩・石見空港
新幹線のないこのエリアだけでも5つの空港が整備されていること、そしてその空港のほとんどがネーミングライツを利用している現状にも気づく。
つまり、空港という交通インフラを利用して新たなビジネスに繋げようとするきっかけになっているのである。
これは人口減少が著しい地方の財政にとっては貴重な収入源になる。
限られた財政のなかで人の時間をどう作り出すかについては、stak, Inc. の考え方にまとめている。
このように交通インフラの充実によって人とモノが正確に動くことは経済の下支えをしている。
交通インフラの欠けている箇所にあるもの
とはいえ、日本全国47都道府県を新幹線と飛行機が網羅しているわけではない。
新幹線を通すのは難しくても、せめて空港は47都道府県の全てに1ヶ所ずつくらいはあってもいいように思う。
ところが、4つの県には新幹線も空港もない。
- 山梨県
- 三重県
- 奈良県
- 福井県
一応、福井県には空港があるが、現在は定期便が飛んでいない。
では、この4県が特別不便かというと決してそんなことはない。
その理由は近隣にターミナルが存在するからである。
例えば、奈良県を例に挙げてみよう。
近隣のターミナルとなるのは、新大阪駅と京都駅だ。
このうちの京都駅から奈良県に向けてJR奈良線と近鉄京都線の2本の路線が出ている。
どちらを選んでも結局は県庁所在地のある奈良市へ到着する。
京都から奈良までの所要時間は約45分である。
この所要時間が長いと思うか短いと感じるかは、どの生活圏にいるかによっても変わってくると思うが、首都圏にいる人なら大した時間に感じないのではないだろうか。
ちなみに、京都から奈良まで近鉄特急に乗れば、別途特急料金が必要になるが全席指定で約35分で到着する。
なにも京都から奈良までではなく、大阪から奈良までの交通インフラもちゃんとある。
大和西大寺駅を奈良盆地北部の要衝として、近鉄奈良線が大阪は難波と奈良を結んでいる。
南に降りる橿原線は大和八木・橿原神宮前という奈良盆地南部の要衝を抱える重要路線だ。
大和八木駅では近鉄大阪線と接続しており、大阪はもちろん遠く伊勢志摩、名古屋までも結ばれる。
とにかく、近鉄は3路線が奈良と大阪を結び、京都線が奈良と京都を結び、大阪線は奈良と三重の伊勢志摩・名古屋までを結んでいると覚えておくといい。
地方のインフラが必ずしも劣っていない理由
新幹線と飛行機に特化してみたが、別に交通インフラは公共機関だけではない。
車を使うことができれば、高速道路が完備されている。
島国とはいえ、日本国内のほとんどが陸路で繋がっており、主要幹線道路を使えばたどり着けるところが大半だ。
そういった事情を踏まえると、実は物理的なアドバンテージがあまりないことに気づく。
ましてや、生活インフラの一部である通信網の普及により、日本全国の殆どのエリアを4Gでカバーされている。
その両方のインフラを使えば、地方より都心の方がアドバンテージがあるとばかりは言い切れない。
逆に地方という特徴を出した上で、都心で戦うことだって不可能ではない。
むしろ、都心では競争率が高く埋もれてしまうようなことでも、地方であればトップで君臨することも可能だ。
こういったギャップを上手に使いこなせれば、場所を選ばずに輝くことも十分にできる。
行政に求められるのは、こういった生活や企業の核として欠かせないインフラの整備と保守メンテナンスだ。
そして、民間企業に求められるのは、ほとんど平等な条件で与えられているインフラをどのように活用して、利益を出していくのかということだ。
このスパイラルが上手く噛み合ったときに、経済が回る。
そのバランスというか、役割分担がしっかりできていれば自ずと強国になれるはずなのである。
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【2026年8月 追記】北陸新幹線の敦賀延伸で、この「4県」は「3県」になった
この記事を書いた2021年8月の時点では、新幹線も空港もない県は山梨・三重・奈良・福井の4県だった。
ところが2024年3月16日、北陸新幹線の金沢駅から敦賀駅までの区間が延伸開業し、福井県に新幹線が通った。
福井県内に開業した駅は4つある。
- 芦原温泉駅
- 福井駅
- 越前たけふ駅
- 敦賀駅
これにより北陸新幹線は高崎駅を起点、敦賀駅を終点とする営業キロ470.6kmの路線となり、通過する府県に福井県が加わった。
つまり2026年現在、新幹線も空港もない県は山梨・三重・奈良の3県である。
新幹線と飛行機のどちらを選ぶかという判断そのものについては、4時間の壁に隠された嘘!?
新幹線と飛行機の選択肢で別の角度から扱っている。
「4県」と「3県」は、どちらも間違いではない
この話題を検索すると「新幹線も空港もない県は4県」と書いてあるページと「3県」と書いてあるページの両方が出てくる。
どちらかが誤りなのではなく、数える条件が3つの地点で分かれているだけである。
1)2024年3月16日より前か後か
延伸前は福井県に新幹線が通っていなかったので4県、延伸後は3県になる。
この1日を境に答えが変わる。
2)「空港がある」を建物で数えるか、定期便で数えるか
福井空港は1966年6月30日に開港しており、施設としては存在している。
しかし旅客の定期路線便は1976年以降まったく運航されていない。
滑走路は1,200mで、現在の主役はチャーター機と自家用機とグライダーである。
日本の97空港のうち唯一グライダーが発着できる空港でもある。
建物で数えれば福井県に空港はあり、定期便で数えれば無い。
3)どの条件の組み合わせを問うているのか
整理するとこうなる。
定期便のある空港がない県は、いまも山梨・三重・奈良・福井の4県で変わっていない。
そのうち新幹線も通っていない県が、2024年3月15日までは4県、3月16日からは3県になった。
つまり福井県は「空港のない県」からは外れないまま、「新幹線のない県」からだけ外れたのである。
4と3の差は、この1県の扱いにすべて詰まっている。
リニア中央新幹線は、残った3県すべてに関わる計画である
さらに先を見ると、この「3県」という数字も永久ではない。
リニア中央新幹線の計画が、残った3県すべてに関わっているからである。
山梨県には山梨県駅(仮称)の位置が甲府市大津町として既に確定している。
名古屋駅から新大阪駅までのルートそのものは未定だが、整備計画では経由地に奈良市附近が挙げられており、三重県では亀山市が、奈良県では奈良市・大和郡山市・生駒市が駅を誘致している。
ただし時期は後ろへ動き続けている。
品川駅から名古屋駅までの区間は当初2027年の開業を目指していたが、静岡工区の工事に着手できず、JR東海は2024年3月に2027年開業を断念した。
開業は2034年以降とされ、東京から大阪までの全線開業は最短で2037年の見通しである。
それでも計画どおりに進めば、「新幹線も空港もない県」というカテゴリーそのものが、いずれ消える。
地方のインフラが都心に劣るという前提は、20年単位で見れば成り立たなくなっていく。
地方が置かれた条件そのものについては、【2025年版】日本の地方荒廃ランキング:衰退エリアとインバウンドが開く再生の扉でも扱っている。
stak の視点
この記事の本文は「4県が特別不便かというと決してそんなことはない」と書いた。
5年経ってもこの結論は変わっていない。
むしろ延伸によって補強された。
ただし論点を1つ足すなら、問うべきは「不便かどうか」ではない。
不便さの正体は、距離ではなく時間である。
奈良に新幹線の駅がないことの実害は「駅がない」ことではなく、京都から45分を毎回払わされることにある。
年に2回なら誤差だが、週に2回なら年間で78時間になる。
丸3日を超える量だ。
同じ「駅がない」でも、頻度が変われば失う量はまったく違う。
この換算を自分の生活に当てはめる方法は時間価値の見える化で人生を豊かにする究極の理論にまとめてある。
そして時間を取り戻す方法は2つしかない。
1つは移動そのものを速くすること。
もう1つは移動を不要にすることである。
前者は行政にしかできない。
北陸新幹線が金沢から敦賀まで延びるのに9年かかっている(2015年3月14日の金沢延伸から2024年3月16日の敦賀延伸まで)。
リニアは開業目標が7年単位で後ろへずれた。
国土に線を引く仕事は、そういう時間軸で動く。
後者は民間の領域だ。
stak は「人件費=時間」を再定義するAIインフラ企業として、「圧倒的に合理的な社会を創造する」ことを掲げている。
移動を速くすることはできないが、その移動が必要だった理由のほうを消すことはできる。
9年かけて45分を短縮する仕事と、今日から往復90分を消す仕事は、まったく違う手段で同じ場所へ向かっている。
最後に、この記事自身のことを書いておく。
本文が「4県」と書いてから、それが「3県」に変わるまで2年7か月かかった。
そして変わった事実がこの記事に反映されるまで、さらに2年5か月かかっている。
交通インフラのほうは9年で更新されたのに、情報のほうは5年更新されなかったわけである。
読む人にとっては、どちらも同じ「古くて使えない」でしかない。
インフラを整えることと、整えたものを最新に保つことは別の仕事であり、後者を怠ると前者の価値がそのまま目減りする。
時間を扱う道具としての stak の取り組みは、この考え方をそのまま製品と事業にしたものである。


