オンライン詐欺被害が5年で3倍に急増した理由

オンライン詐欺被害が5年で3倍に急増した理由
遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん) → いつまでも疑い迷って、決断せずにためらうこと。

遅疑逡巡とは、物事を決断する際に疑念を抱き、ためらってしまうことを指す言葉だ。

この言葉は、中国の古典「史記」の一節に由来する。

「遅疑逡巡して進まざれば則ち退く」という一文で、「ためらって前に進まなければ、退くことになる」という教訓が説かれている。

遅疑逡巡の概念は、古来より意思決定における重要な要素として認識されてきた。

兵法書「孫子」では、「疑わしきは用いず」と記され、判断に迷う者を重用してはならないと説かれている。

一方で、三国時代の武将・諸葛亮孔明は、「疑わしきは決せず」という言葉を残しており、軽率な判断を戒めている。

歴史的な文脈に目を向けると、遅疑逡巡は政治の世界でも大きな意味を持っていた。

例えば、古代ローマの政治家キケロは、「決断の遅れは、しばしば国家の危機を招く」と警鐘を鳴らしている。

実際、ローマ帝国の衰退には、皇帝たちの優柔不断な姿勢が影響したとの指摘もある。

一方、日本の歴史においても遅疑逡巡は重要なテーマだ。

戦国時代、武将たちは常に生死を賭けた決断を迫られた。

「即断即決」の姿勢が求められる中、遅疑逡巡は致命的な弱点とされた。

例えば、織田信長は「遅疑逡巡する者は去れ」と家臣に言い放ったという逸話が残されている。

近代に入ると、遅疑逡巡は経営の世界でも注目されるようになった。

industrialist(工業家)の渋沢栄一は、「疑念を払拭し、決断力を養うことが企業家の条件だ」と説いている。

スピードが命の現代のビジネスにおいて、遅疑逡巡はリスクと隣り合わせだ。

以上のように、遅疑逡巡は古今東西、意思決定に関わる普遍的な概念だ。

適度な懐疑心は必要だが、決断の先送りは致命傷になりかねない。

その危うさは、現代社会ではより色濃くなっているようだ。

とりわけ、インターネットの発達に伴い、オンライン上の人間関係が希薄化する中、「疑う」ことの重要性が増している。

相手の素性が分からないオンラインでは、一瞬の油断が身を滅ぼすリスクにつながる。

遅疑逡巡からの脱却が、まさに今求められているのだ。

自己防衛における「疑う」ことの重要性

SNSの普及やオンラインショッピングの活性化により、私たちは日々大量の情報に触れている。

その中には、悪意を持って作られたフェイクニュースや詐欺まがいの広告も数多く含まれている。

こうした情報を鵜呑みにせず、「疑う」姿勢を持つことが自己防衛に直結する。

特に、オンライン上では相手の素性が分かりにくいため、慎重さが求められる。

「うまい話には裏がある」という諺もあるように、簡単に儲かる話や過度に魅力的な提案には要注意だ。

例えば、2021年に発生したとある事件の例を見てみよう。

SNSで知り合った人物から「高収入の仕事を紹介する」と持ちかけられた被害者が、会員登録費用名目で数十万円を振り込んだ後、連絡が取れなくなるという詐欺が発生した。

被害者は「話が上手く、信用してしまった」と述べているが、もう一歩踏み込んで疑っていれば防げた可能性がある。

同様の事例は枚挙に暇がない。

2020年には、出会い系サイトで知り合った人物から「病気の治療費が必要だ」と持ちかけられ、1,000万円以上をだまし取られた被害者もいる。

「相手を信じたい」という気持ちが裏目に出た形だ。

また、ショッピングサイト上の偽物販売も後を絶たない。

ブランド品を装いながら、粗悪な海賊版を販売するケースだ。

価格の安さに釣られ、「本物かもしれない」と期待を寄せる消費者が引っかかる。

疑う目を持っておけば、このような被害は防げるはずだ。

ここで、「疑う」とはなにを意味するのか整理しておきたい。

それは、盲目的に情報を信じないことだ。

常に「本当にそうなのか」「裏でなにが起きているのか」と、多角的な観点から考えることが肝要だ。

例えば、ニュースを見聞きした際は、情報源の信頼性をチェックすることから始めよう。

発信者の属性や過去の記録を調べ、バイアスがかかっていないか確認するのだ。

また、1つの情報に偏らず、複数の観点から分析することも重要だ。

商取引の場では、取引相手の本質を見抜く目が問われる。

「なぜこんなに安いのか」「どんな見返りを求めているのか」と、相手の動機を探ることが欠かせない。

甘い言葉に踊らされず、冷静に判断する習慣をつけたい。

「疑う」姿勢は、情報との付き合い方を根本から変える。

鵜呑みにせず、批判的に吟味する。

真偽を見極め、本質を掴む。

そうした能動的な情報収集が、オンライン詐欺のリスクを大幅に下げるのだ。

もちろん、疑いすぎるのも考え物だ。

疑念のために行動が止まっては本末転倒だ。

大切なのは、バランス感覚を持つことだ。

疑念と信頼を柔軟に使い分け、賢明な判断を心がけたい。

「疑う」力は一朝一夕では身につかない。

日頃から情報に敏感になり、批判的思考を鍛えることが欠かせない。

そうした地道な努力の積み重ねが、やがて自己防衛の強固な盾となるのだ。

詐欺被害に遭いやすい人の特徴

では、どのような人が詐欺被害に遭いやすいのだろうか。

国民生活センターの調査によると、次のような特徴が挙げられる。

1. 引っ込み思案で、「ノー」と言えない 2. 人を簡単に信用してしまう 3. お金や投資に関する知識が乏しい 4. SNSでの交友関係が広い 5. 面倒なことを嫌がる

これらの特徴に当てはまる人は、「疑う」ことに消極的になりがちだ。

特に、社交的でSNSでの交友関係が広い人は、安易に個人情報を公開してしまうリスクがある。

知らない相手でも、つい心を開いてしまう傾向があるのだ。

こうした「人を信じやすい」性格は、詐欺師にとって格好の標的だ。

巧みに親密さを演出し、言葉巧みに信頼を勝ち取る。

そして、一気に金銭を要求してくる。

騙されたと気づいた時には、手遅れなのである。

また、投資知識の乏しさも詐欺被害を招く要因だ。

例えば、2020年に社会問題化した仮想通貨関連の詐欺では、「必ず儲かる」といった甘言を信じて多額の投資を行い、大損害を被るケースが相次いだ。

投資は本来、リスクとリターンのバランスを見極める高度な判断が求められる。

それを理解せずに、一攫千金を夢見てしまう。

その心理につけ込まれ、詐欺の餌食になってしまうのだ。

さらに、社会的地位が高い人も詐欺のターゲットになりやすい。

医師や教授、経営者など、いわゆる「エリート」と呼ばれる人々だ。

彼らに共通するのは、プライドが高く、「自分は騙されない」という過信だ。

その自信が仇となり、詐欺師の甘言に乗せられてしまう。

特に、知的好奇心を刺激する「新しい投資話」などは、エリートの心をくすぐる。

リスキーだと分かっていても、興味を抑えきれない。

そこに付け込まれるのだ。

他にも、高齢者は詐欺被害に遭いやすい。

認知機能の低下により、判断力が鈍る。

また、孤独感から話し相手を求める心理も狙われる。

オレオレ詐欺に代表されるように、高齢者を狙う手口は非常に巧妙だ。

このように、詐欺被害のリスクは誰にでもある。

自分は大丈夫だと過信せず、常に警戒心を持つことが大切だ。

「疑う」姿勢を身につけ、甘い話に飛びつかない。

その一念が、詐欺の脅威から身を守る鍵となるのだ。

オンライン詐欺被害の実態と過去5年間の被害総額

さて、ここ数年のオンライン詐欺被害はどのような実態にあるのだろうか。

警視庁の統計を見ると、その被害額は年々増加の一途をたどっている。

2015年のオンライン詐欺被害額は約20億円だったが、2020年には約60億円と5年で3倍に急増した。

特に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンラインショッピングやSNSの利用が活発化したことで、その傾向に拍車がかかっている。

手口も多岐にわたる。

偽サイトを使ったフィッシング詐欺、ショッピングサイトを装った偽の出品、SNSを介したRomance Scam(恋愛詐欺)などだ。

中でも、偽サイトによるフィッシング詐欺は全体の4割を占め、最も多い。

これは、偽サイトの精巧化が背景にある。

一見すると本物と見分けがつかないほどクオリティが高く、閲覧者を欺くことに特化している。

「アカウントの確認が必要です」といったメールに添付された偽リンクをクリックした瞬間、個人情報を抜き取られてしまうのだ。

また、2020年には「コロナ詐欺」とも呼ぶべき新手の手口も登場した。

例えば、「コロナ感染者の濃厚接触者である」と装い、検査費用をだまし取るケースだ。

パンデミックの混乱に乗じ、人々の不安を利用する卑劣な手口である。

さらに、フィッシング詐欺の被害者の中には、二次被害に遭うケースもある。

個人情報を盗まれた後、今度はそれを利用して脅迫され、金銭を要求されるのだ。

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